中学受験が再注目されたきっかけは大学入試制度改革!?大学付属校人気は続くのか
2024年度の首都圏における私立・国立の中学受験者数は前年比200人減となったものの、受験率は18.12%(前年比0.26ポイント増)で過去最高を更新しました。 中学受験熱は年々高まっているのは確かですが、受験者数が上昇ムードに転じてからまだ10年も経っていないことをご存じでしょうか。「中学受験が注目された大きな理由のひとつが大学入試にある」と聞くと、保護者の皆さんは驚かれるかもしれません。中学入試と大学入試の関係について、データをもとに解説します。(寺田拓司:株式会社東京個別指導学院 進路指導担当)
大学入試制度改革をめぐる不透明感が影響
2008年9月に起こったリーマンショックは景気に大きな打撃を与え、受験もその例に漏れませんでした。2009年度以降、首都圏の中学受験率は下降を続けます。この下落傾向に歯止めがかかり、中学受験率が再び上昇を始めたのは、2015年度入試からです。 2015年度以降の首都圏中学受験率の上昇の要因は何だったのしょうか。そのひとつは「大学入試制度の変化の不透明感」にあったと見ています。 2014年12月、文部科学省中央教育審議会が「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」と題する答申を公表しました。その中には「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を2019年度から、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を2020年度から導入する案や、各大学が個別に行う入学者選抜の改革の方向性などが示されました。特に「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は従来の大学入試センター試験から大きく変わるもので、当時は大きく報道されました。 2014年12月に中央教育審議会が示した 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」案(抜粋)・年複数回実施 ・CBT(コンピューターを利用する試験)方式での実施を前提に開発 ・記述式問題の導入 ・「教科型」に加えて「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題 ・高難易度の出題を含む ・英語は四技能を総合的に評価できる問題の出題や、民間の資格・検定試験を活用 この答申を受けて発足した「高大接続システム改革会議」において、推進方策についての議論が始まります。しかし、検討が進むにつれて、実現に向けてのさまざまな問題点が浮上してきたため、「迷走中」と表現する報道も見られました。 このような状況下で、新入試制度への対応力は公立校よりも私立校のほうが高いのではないかという期待が集まった結果、中学受験率が上がっていきます。中学受験率は2014年度で下降傾向が底を打ち、2015年度以降は上昇傾向に転じています。