中学受験が再注目されたきっかけは大学入試制度改革!?大学付属校人気は続くのか
文科省の定員管理政策の変更による影響
このような大学入試改革の動きとは別に、2016年度から文部科学省による「私立大学の定員充足率の基準の厳格化」が始まりました。これは、入学定員に対する入学者率が一定の基準を超えた大学に対して、国の補助金を減額もしくは不交付とするという政策です。 この政策を受けて私立大学は合格者の絞り込みを行ったため、私立大学の一般選抜が難化しました。その影響もあり、系列大学への内部進学が可能な、いわゆる大学付属校(系属校・系列校・準付属校等も含む。以降も同様)の人気が高まります。その大学付属校人気を反映した形で、中学入試での難易度(模擬試験の合格可能性判定偏差値)も上がりました。図の朱色の折れ線は、GMARCH付属校の合格可能性80%偏差値の平均値の推移です(GMARCH:学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学) 。 2008年のリーマンショック等の影響で、前述の通り2009年度以降の首都圏中学受験率は下降を続けました。中学受験率が下降する中、GMARCH付属校の平均偏差値は横ばい傾向でしたが、2015年度以降は偏差値が上昇に転じています。そして、大学入学定員超過率の基準が厳しくなる(=大学入試が厳しくなる)につれて、GMARCH付属校の平均偏差値の上昇ペースも上がりました。 その後、文部科学省は「平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)」により、「2019年度以降の入学定員充足率が1.0倍を超えた際に学生経費相当額を減額するペナルティ措置については当面実施を見送ることにし、3年後をめどに実施か否かを再検討する」としました。 さらに「令和5年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱いについて(通知)」 では、2023年度からは入学定員超過率の基準を廃止して、収容定員超過率の基準に一本化しました。つまり、各年度の入学者数ではなく、大学の収容定員に対する全学年の在籍者数で判断することにしたのです。 これまで年度単位で慎重に合格者を絞り込んで入学定員管理をしてきた私立大学の中には、入学定員割れに陥っていた大学もあり、2023年度は合格者を多めに出すことによりその補填を行いました。その結果、2023年度大学入試の入学定員超過率は緩和しました。この動きに合わせるかのように、中学入試でのGMARCH付属校偏差値の上昇傾向も鈍化していることがわかります。 では今後、GMARCH付属校の人気や難易度は下がるのでしょうか。大学側としては、2023年度に多めに入学させた分、次年度以降は合格者を絞り込んで入学者を抑える必要が出てきます。収容定員超過率の基準は、2025年度には1.10倍になりますので、定員管理政策によるGMARCHの数年後の難化は十分考えられます。 GMARCHは、関東の高校生の「志願したい大学」ランキング(リクルート進学総研「進学ブランド力調査2023」)のTOP20に入る人気大学です。図のように、2005年以降に付属校化したいくつかの中学校では、入試難易度も上昇しています。 日本学園は明治大学との高大連携協定を結び、2023年度の中学入学者から明治大学への推薦試験による入学が可能になったことで、2023年度入試の偏差値が2022年度より20ポイント上がりました。2023年度の中学入学者が高校に進学する2026年には、系列校として「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」と名称も変え、男子校から共学校になります。今後も人気は高まっていくのではないでしょうか。