中学受験が再注目されたきっかけは大学入試制度改革!?大学付属校人気は続くのか
慶應義塾大学でも一般選抜による入学の枠が狭まっている
慶應義塾大学は入試区分別の入学者数や、将来の学生募集の方向性を公表していませんが、総合政策学部、環境情報学部の両学部で、それぞれ275名だった一般選抜の定員を、2021年度から225名へと約2割削減しました。減少分を「AO入試」による募集定員で補いました。さらに、2025年度以降から 学校推薦型選抜(指定校による推薦入試、募集人員30名)の導入に伴い、一般選抜の募集人員を30名減らします。このように、一般選抜による入学の枠は確実に狭まっています。 早慶の付属校の平均偏差値は、中学受験率の高低にかかわらず上昇傾向にありましたが、ここ数年は高止まりしています(図の青の折れ線)。しかし、今後は一般選抜で早慶に合格する道は狭くなると考えられますので、中学受験で付属に入学して、早慶進学への道を確保しようと考える受験生も増えていくでしょう。このため、早慶の付属校人気は継続するのではないでしょうか。
日本大学の付属校には進学校の側面も
日本大学の付属校と一口にいっても、内部進学率が7割を超える日本大学豊山のような学校から、他大学への進学者のほうが多い日本大学第三のような学校までさまざまです。日本大学付属中学校の合格可能性80%偏差値の平均と中学受験率をグラフにすると、中学受験率の高低のトレンドに少し遅れて平均偏差値も上下している傾向が見られます。 学校選びの最大ポイントが「大学付属校であること」という受験生の場合、第一志望がGMARCH付属校で、併願校の選択肢に日本大学の付属校が入るケースを多く見受けます。このことは、近年の日大付属校人気の理由のひとつと推測されます。日大付属校には他大学進学希望者向けのコースやクラスを設置している学校も少なくありません。こういった「進学校」としての教育力も評価されていることから、首都圏中学受験率は2024年度も上昇しており、日本大学付属校の難易度もおおむね継続しそうです。
中学受験での学校選びは、6年後を見据えて検討する
2023年度入試では、早慶・GMARCH・日大等の付属校の中で志望者を減らした学校も少なくなく、「付属校離れ」と評する識者もいました。対前年度では志望者数は減っているのですが、これまで見てきた通り入試難易度は全体的に上昇傾向です。志望者が減ったからといって、必ずしも入学しやすくなったとはいえません。 中学受験での学校選びの難しさは、出口(主に大学進学)を考える際に「子ども・大学・入試の6年後をイメージしなければならない」ということです。「子どもの将来・大学の将来・入試の将来」の3つのポイントを見ていきましょう。 まず、「子どもの将来」についてです。大学付属校を選択する場合のデメリットとして、在学中に将来の夢が変わったときに対応しにくくなる点が挙げられます。大学にはそれぞれ学部が複数あるものの、すべての学問分野の学部が設置されている大学のほうが少ないのです。そのため、付属先の大学では将来の夢が叶えられないということも出てくるでしょう。条件はさまざまですが、内部推薦の権利を確保したまま他大学を受験できる大学付属校もあります。この点は学校説明会でしっかり確認しておいたほうがよいでしょう。 次に、「大学の将来」についてです。GMARCHというと、理系学部が文系学部よりも充実していないという印象を持っている保護者もいるかもしれませんが、数年以内に理系・情報系の学部が新設されることはご存じでしょうか。2026年度に立教大学が「環境学部(仮称)」を豊島区に、青山学院大学が「統計・データサイエンス学部(仮称)」を渋谷区に、2027年度に中央大学が「農業情報学部(仮称)」「健康スポーツ科学部(仮称)」を八王子市に新設する構想を発表しています。大学の変化に関する情報にも、保護者は敏感になっておくとよいでしょう。 最後に、「入試の将来」についてです。難関私大でも、今後は一般選抜での入学者数が減っていく方向だということ、本コラムで触れたように、収容定員率の問題で人気大学では合格者の絞り込みが再び始まりそうだということ、早稲田大学のように戦略的に学部学生数を減らす大学が出てくること、などが考えられます。
おわりに
中学受験の志望校選びは、大学進学に直結しています。「将来学べる学問の選択肢を広げておきたいから、中学は付属校ではなく進学校に」という考え方もあれば、「近い将来、一般選抜での難関私大への道は狭くなりそうだから、中学から付属校に」という考え方もあります。どちらが正解ともいえず、ご家庭の教育方針によっても答えは異なるでしょう。いずれにせよ、直近の倍率や偏差値の高低だけではなく、中長期的なトレンドや6年後を見据えた志望校選択を行うことが重要です。
寺田拓司