なぜバルセロナは無冠に終わったのか…次期監督確実視クーマンへの期待とは?
さらにバルトメウ会長は5月下旬になって、日本円で約12億円におよぶ追加の給与削減をメッシ以下の選手たちに求めている。しかし、クラブ側は非常警戒体制発令に伴うERTE(一時的雇用調整)を実施し、一部ではあるものの、すでにクラブスタッフを一時的に解雇していた。 戸惑いや疑問が広がるなかで、バルトメウ会長の経営方針に対しても厳しい批判が向けられる。先駆けること4月にはエミリ・ロウサウド副会長以下、6人の幹部がいっせいに辞任。記者会見したロウサウド氏はクラブ内で横領が行われていたと主張し、クラブ側は「深刻かつ事実無根の告発だ」と真っ向から反論するなど、お家騒動のなかでサッカーに集中するのが難しい状態に陥っていた。 果たして、残り11節が6月に再開したラ・リーガ1部で、バルセロナはセビージャ、セルタ・デ・ビーゴ、アトレティコ・マドリードと引き分け、ホームのカンプ・ノウにオサスナを迎えた第37節では、後半アディショナルタイムに喫した失点でまさかの黒星を喫してしまう。 対するレアル・マドリードは破竹の10連勝をマーク。宿敵バルセロナの自滅に近いペースダウンもあり、1試合を残して3シーズンぶり34度目の優勝をもぎ取った。残されたタイトルとなるチャンピオンズリーグへの挑戦も、冒頭で記したようにバイエルンに喫した大敗で幕を閉じた。 セティエン監督の解任翌日の18日には、2018年夏から現職を務めてきたアビダル・スポーツディレクターとの契約を、クラブとの双方合意のもとで解消することも発表された。来年6月に任期満了を迎えるバルトメウ会長は、反体制派の辞任要求には応じない代わりに、次期会長を選出する選挙を予定より約3カ月早めて来年3月中旬に実施することを取締役会に提案して承認されている。 オランダサッカー協会の承認が必要な事項だけに、クーマン新監督の就任は正式にはアナウンスされていない。ロシアワールドカップ出場を逃したオランダ代表を、来年に延期されたヨーロッパ選手権出場へと導いているクーマン監督だが、クラブレベルで獲得したトップカテゴリーでのタイトルは、PSVアイントホーフェンをエールディヴィジの頂点に導いた2006-07シーズンの一度しかない。 バレンシアやAZアルクマール、エヴァートンでは戦力の大幅な入れ替えを断行した末に、成績不振を理由に改革半ばで解任されている。手腕は未知数ながらも世代交代が急務のバルセロナとは方向性が一致すると思われるなかで、ラキティッチやスアレス、チリ代表MFアルトゥーロ・ビダルらの他のクラブへの移籍だけでなく、大黒柱のメッシにまで退団する可能性があると報じられている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)