廃炉にロボットで貢献できるか――福島高専の挑戦と、若き学生たちの思い #知り続ける
廃炉や原子力にいつか役立つ可能性
第5回の廃炉創造ロボコンに参加した武田さんは、福島県のほぼ中央に位置する須賀川市出身で、小学3年生のときに大震災を経験した。ちょうどホームルーム中で、慌てて机の下に身を隠したという。その後しばらくの間、放射性物質の吸引を避けるためにマスクをして頻繁に手洗い、洗顔もした。そんな日々は今も目に焼きついている。 だからこそ、廃炉や福島の復興に何かしらの貢献をしたいという。 「東北の復興で最大の壁が原発事故です。原発事故とは何なのかという疑問を持って福島高専に来ました」 この4月からは福島大学に編入学し、廃炉に関わる機械工学を学ぶ予定だ。 一方、鳥羽さん、冨樫さんは特に廃炉や原発に関わる仕事に就きたいわけではないという。廃炉創造ロボコンに参加したのは、「より難しい課題にチャレンジできる点に魅力を感じたから」(冨樫さん)。鳥羽さんも「四足歩行ロボットのような、もっと市場競争の激しい分野で腕を試したい」と語った。
学生たちの廃炉に対する思いには濃淡がある。だが、それでかまわないと鈴木准教授は言う。 「困難な課題にチャレンジした経験は、彼らの将来にきっと役立ちます。大学や就職先で廃炉とは全く関係ない分野に進んでも、巡り巡って再び廃炉に関わる可能性もゼロではありません」
企業も若い人材に期待
企業も、廃炉創造ロボコンの参加学生に熱視線を送る。同ロボコンを協賛し、原発のメンテナンスや廃炉作業などを支援するアトックスの福島復興支社副支社長・新妻英雄さんはこう話す。 「毎年、廃炉創造ロボコンを見ながら、同じ課題に対してこんなにたくさんのアプローチがあるのかと驚かされます。高線量下での遠隔作業は予期しない困難に何度もぶつかります。我々としてはどう作業を進めればいいのか提案できるくらいに技術力を高めたい。福島高専の学生は、原子力に関する基本的な知識を身につけている人が多いから、ぜひ一緒に働きたいですね。昨年うちに入社してくれた卒業生は頑張り屋で、評判もいいんですよ」