「フェラガモ」の命運握る29歳デザイナーが語る 伝統を前進させる覚悟
WWD:デビュー当初に比べると、最近のコレクションはより落ち着きがあり、着やすいアイテムも増えた印象を受ける。実際に“売れる”ものを作ることをどれくらい意識しているか?クリエイティブとビジネスのバランスを取る難しさは感じるか?
デイヴィス:難しいことではなく、商業性とクリエイティビティーのそれぞれを適切な形で打ち出せばいいと考えている。常にデザインチームに確かめているのは、「自分がデザインしているものを自分自身が身に着けたいと思うか?」ということ。デザインする人自身がその製品を信じられなければ良いものは生まれない。それに、素材や構造が適切であり、着心地が良くラグジュアリーであるかを理解するためには、身に着けてみることが必要だ。ショー後から生産に入るまでにも、それぞれが実際に着用して問題点を見つけ出し、製品を改良している。もの作りに対するそういった姿勢は、商業性や実際に売れるものを理解するのにとても役立つと思う。その上で、ショーで見せるメーン・コレクションでは、クリエイティビティーを押し出すため、少しだけウエアラブルではないものを加えることもある。一方、核となるスタイルを提案するプレ・コレクションは理解してもらいやすく、ウエアラブルであること大事だと考えている。
WWD:これまでのコレクションを見ると、色の選び方が独特で印象的だ。どんなところから、そのヒントや着想を得ているのか?
デイヴィス:昔から「フェラガモ」の色使いは力強かったから、今後も受け継いでいくべき要素だと考えている。色使いに関しては、たくさんのアーカイブをリサーチしたり、美術館でいろんな絵画を見たり。それに、自分のルーツであるカリビアンの伝統によるところも大きいと思う。現地のカーニバルでは、自由の表現として、一見マッチしないような色を組み合わせる。だから、私にとってこの色彩感覚は自然なもので、心の中はとてもカラフル。自分自身は黒や紺といった落ち着いた色ばかり着ているけれどね(笑)。