「フェラガモ」の命運握る29歳デザイナーが語る 伝統を前進させる覚悟
“家族”のためにデザインするというアプローチ
WWD:「フェラガモ」には、100年近い歴史がある。クリエイティブ・ディレクターとして、伝統あるブランドを“現代的”に表現するために、新たに持ち込んだ価値は?
デイヴィス:自分のブランドでもそうしていたように、さまざまな世代が入り混じる“家族”のような人々のためにデザインするというアプローチ。より成熟した顧客に対する感性があると同時に若々しい遊び心あふれるエネルギーもあるということは、私が「フェラガモ」のクリエイティブ・ディレクターに選ばれた理由の一つだと思う。最新のコレクションではさらにその意識を強く持っていて、家族全員に合うようなラインアップに発展できている手応えがある。そんな“あらゆる年齢層にリーチできる品ぞろえ”というのは、靴でそれを成し遂げた「フェラガモ」の原点にも通じること。自分の手掛ける「フェラガモ」ではウエアやバッグも含め、それを実現したい。また、新たに持ち込んだものではないけれど、1980~90年代の「フェラガモ」に見られたようなセンシュアリティー(官能性)とエレガンスを取り戻し、新たなエネルギーをもたらしたいと考えている。
WWD:確かにコレクションからは、センシュアリティーやエレガンスも感じられる。特に23-24年秋冬では、ソフィア・ローレン(Sophia Loren)やマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)といった1950年代に活躍したスターから着想を得ながらも、当時の女性性の表現は「異星人のように感じる」と語っていた。過去と比べて、現代のセンシュアリティーやエレガンスはどのように違うと感じる?
デイヴィス:現代の美しさは、もっと多様でオープンだ。50年代の人たちは、自分の体をよりグラマラスに、より官能的に見せる方法として、特定の着こなしをしていたと思う。23-24年秋冬コレクションで取り組んだのは、そこに目を向ながらも、現代風にアレンジするというアプローチ。例えば、マリリン・モンローを象徴する白いドレスのようなサークルスカートをナイロンで作り、コクーンシェイプのウインドブレーカーと合わせるといったようにね。50年代のシルエットを取り入れながらも、どんな素材なら現代的に感じられるか、今を生きる人々はどのような服装を望んでいるのかを考えたんだ。