「フェラガモ」の命運握る29歳デザイナーが語る 伝統を前進させる覚悟
WWD:振り返ると、22年9月に発表したデビューコレクションで、ミニマルかつモダンなスタイルを軸に新しい「フェラガモ」像を明確に打ち出したのが印象的だった。新たなブランドイメージを確立する上で重視したことは?
デイヴィス:フレッシュであること。新たな始まりだと感じさせることが必要だった。自分が加わる前の「フェラガモ」は、いくつかの異なる方向性があり、少し分かりづらかったと思う。だからデビューコレクションはブランドにとっての新しいキャンバスを用意するため、ミニマルなシルエットにフォーカスした。特に、赤いジャケットドレスのルックが新生「フェラガモ」のシルエットを象徴していて、プロポーションやデザインを変えながらも毎シーズン打ち出している。そして、2シーズン目からは、ディテールや素材、プリント、テクスチャーにおける進化に取り組んでいる。
WWD:あなたが考える「フェラガモ」のDNAやコアバリューとは?
デイヴィス:何より創業者のサルヴァトーレ・フェラガモは革新的な人。彼はお菓子の包み紙のようなセロハンやワインのコルク、ラフィアといった身の回りにある素材を使って、靴を作っていた。そんなイノベーションの精神は今でもとても重要であり、ブランドの核となるDNAだと思う。そして、それに関連するもう一つの大切な部分は、クラフトへの向き合い方だ。昨日ちょうど、1万5000足のシューズをアーカイブとして持っているブランドが他にどれだけあるか?ということをチームと話したところだけど、それこそが「フェラガモ」の伝統やクラフツマンシップを物語っている。そして、受け継がれるイタリアの職人技と素材は「フェラガモ」の原点であり、ずっと業界をリードする特別な価値になっている。
WWD:では、今もよくアーカイブも訪れている?
デイヴィス:コレクション制作を始める時は、訪れるべきだと考えている。サルヴァトーレとファミリーがこれまで築き上げてきたものに敬意を払いたいからね。だから、アーカイブを見に行ったり、30年以上「フェラガモ」で働いている人たちに話を聞いたりして、当時のコレクションはどうだったか、どんな方向性だったかということを知るんだ。そういったコレクションの出発点になる豊かなアーカイブや知識を持った人がいることはありがたく、それが「フェラガモ」というブランドをユニークな存在にしていると思う。実際、毎シーズン、アーカイブを調べて、新しいアイデアや素材、アプローチを見つけることは、とても楽しい。