「湯船という小船で、人生の大海原へ」──風呂場から考える“おうち性教育”、山田ルイ53世の反省 #性のギモン
迫りくるネット「赤ちゃんってどうやって生まれてくるの?」
さてこの辺で、「口にしなくても、感じている子はたくさんいる」と先生もご指摘の、「赤ちゃんってどうやって生まれてくるの?」にどう対処すべきかを教わっておこう。 太古の昔から、数々の団欒の場を気まずくしてきたであろう、育児界における“フェルマーの最終定理”。いつ何時、直面するか分からないと筆者が焦っていたのは、ネット社会の存在のせいである。 私事で恐縮だが、10年近くの間、長女に自分の職業を伏せてきた。「パパはお笑い芸人で髭男爵って言うんだよ!」と告白したのはつい半年ほど前だ。 その際、コロナ禍で配られたリモート学習用のiPadで、“山田順三(筆者の本名)”と娘が検索していた事実が発覚。 子どもの好奇心は侮れぬと思い知った身として、「セックスに関する情報は、SNS上に飛び交っています。『ラブラブ』とか『エッチ』って入力しただけで、アダルト動画が出てくることも。いくらフィルタリング機能を駆使しても、性情報を求めていなくても、子どもの目に触れることは十分考えられる」と眉をひそめる先生と同じく、危惧を抱いていたのである。 では、具体的にはどのように説明しておくのがよいのだろうか。 「『妊娠は、卵子と精子が結合し、子宮に着床して始まる』って、5~8歳の学習目標に書いてあるんですね」とここでも登場したのは、 “国際セクシュアリティ教育ガイダンス”だ。 長女は10歳ですがとつぶやく筆者に、「9~12歳だと、『ペニスが腟内で射精する性交の結果で妊娠が起こる』です」と応じる先生。 (もう習ってるの!?)と心の中でツッコんだのは、小1で割り算を楽々とこなす、公文に通っていたクラスメートに対して以来だろうか。ハードルの高さにくじけそうだが、「包括的性教育によって性行動に慎重になり、思いがけない妊娠や性感染症のリスクが下がることがわかっています」という先生を信じ、腹をくくった。 「赤ちゃんのでき方について聞かれたらまず教えるのは、卵子と精子が合わさって赤ちゃんができること。卵子はママの体の中にいる小さな赤ちゃんのもと、精子はパパの体の中にいる赤ちゃんのもとだよって」 「『卵子と精子はどこにいるの?』と聞かれたら、大事なところにいるんだよと。女の人のお腹の中に子宮っていう赤ちゃんが育つ部屋があって、そのそばの卵巣の中に卵子がいる。男の人のペニスのわきの袋の中に精子がいる。卵子と精子を合わせるために、硬くなったペニスを腟に入れる。あくまで科学的な視点に立って……」 どんどん進む“授業”に、「硬さまで言わないとダメですか⁉︎」と思わず口を差し挟むも、「この伝え方はあくまで一例で、自分の言葉で伝えるのは抵抗があるという場合は性教育の絵本などが役立ちます。国際ガイダンスにも、勃起することは一般的なことだと書いてある。9~12歳は、コンドームの正しい使い方なども学習目標に含まれています」と丁寧に解説していただき納得。 「親が正しい知識を持って教えなきゃ、と身構えずに、私たち大人もなかなか学ぶ機会がなかったと思うので、子どもと一緒に学び直せるといいですね」という先生の言葉に耳を傾けながら、ふとよみがえったのは、幼少期の記憶だった。