なぜ神戸のFW大迫勇也は「いまのままではW杯メンバーに選ばれない」と注目発言をしたのか?
中3日で迎えた清水エスパルスとの第5節でも先発した大迫は、チーム最多となる5本のシュートを放ちながら、森保ジャパンの盟友である権田修一(33)の好守の前にゴールを奪えないまま後半32分に交代。神戸も0-0で引き分けた。 アジア最終予選へ向けて招集されていた、森保ジャパンを辞退すると発表されたのは清水戦の数時間後だった。日本サッカー協会(JFA)は理由を怪我とだけ発表したが、神戸の三浦淳寛監督(当時)は清水戦後に、大迫についてこう言及していた。 「ACLのプレーオフを戦った後で、足が万全ではない状態でプレーしていた。できればフル出場してほしかったが、両足がつった状態になったので交代させた」 メルボルン戦で神戸を今シーズンの公式戦初勝利に導き、勢いをリーグ戦初勝利につなげようと清水戦へ強行出場した。代償として7大会連続7度目のワールドカップ出場を決めた敵地シドニーでのオーストラリア代表戦、凱旋マッチで不本意な引き分けに終わった埼玉スタジアムでのベトナム代表戦を応援する立場に変わった。 その過程で大迫は髪の毛を金髪に染めて、ファン・サポーターを含めた周囲を驚かせている。9日のオンライン取材では、いまも変わらぬ金髪は「気分転換の意味合いもあったのでしょうか」と問われた。大迫は思わず苦笑している。 「そんなに深い意味はないけど。ただ、しっかりと気持ちを切り替えて、やっていかなくちゃいけないのかな、と」 見た目こそ変わったものの、サッカーに対するポリシーは変わらない。それは「何よりもまず所属クラブで結果を出さなければいけない」――代表と結びつけながら、大迫はオンライン取材のなかで決意や覚悟が反映された言葉を残している。 「そういう(所属クラブで結果を残した)選手が(代表に)行くべきだと思っている。なので、そこは自分に対してもプレッシャーを与えながらやっていきたい」 大迫のポリシーに則れば、現時点で最も代表に近いフォワードは、3月シリーズにも招集された上田綺世(23、鹿島アントラーズ)になる。 7試合で5ゴールをあげた上田は、得点ランキングで単独トップに立つ。しかも2ゴールをあげたガンバ大阪との開幕戦、3試合連続ゴールを継続中の湘南ベルマーレ戦、清水戦、直近のアビスパ福岡戦で鹿島はすべて勝利。暫定首位の川崎フロンターレを勝ち点ポイント差で追う2位・鹿島を、ゴールを介して力強くけん引している。 上田と対極に位置する形で、個人とチームの成績が悪い方向で比例している現状を真正面から受け止めた上で、大迫は8分ほどの取材対応のなかで「結果」という単語を7回も発した。例えばセレッソ戦へ向けた第一声はこう切り出されている。 「本当に結果がほしい。個人的にもすごくほしいし、チームとしてもほしいので、明日はそこへ向けていい準備をするだけだと思っている」 清水戦翌日の3月20日に三浦監督が解任。暫定の形で2試合指揮を執ったスペイン出身のリュイス・プラナグマ・ラモス氏(41)は神戸にとどまり、今シーズンから新設された元職のヤングプレイヤーデベロップメントコーチに戻った。 三浦監督の解任時で4分け3敗だったリーグ戦の軌跡に、さらに2つの黒星が追加された。開幕連続未勝利における従来のクラブワースト記録、1999シーズンの「5」を大きく更新した状況を大迫は「僕たち選手の責任でもある」と受け止め、前日8日から指揮を執るロティーナ新監督の存在を踏まえながらこう続けた。 「いろいろな面で整理してもらえているので、それを僕たちはピッチの上で表現するだけだと思っている。僕の感覚的にはこれをやればやるだけよくなると、すごくポジティブにとらえている。楽しみな部分もあるなかで、結果を出さなきゃいけないという危機感も持ちながら、明日はいい緊張感のなかでプレーしなくちゃいけない」 胸を張って代表メンバー入り争いに加わるために。チームの結果につながる個人の結果、すなわちゴールを貪欲に追い求めて、大迫はノエビアスタジアム神戸のピッチに立つ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)