シュツットガルト入団の18歳逸材DFチェイス・アンリはJリーグ未経由海外移籍のジンクスを覆すことができるのか?
ドイツ・ブンデスリーガ1部のシュツットガルトは7日、U-21日本代表DFチェイス・アンリ(18、福島・尚志高卒)の加入が決まったと発表した。 来シーズンが始まる7月1日からの複数年契約にサインしたもので、まずは4部リーグ相当のレギオナルリーガに所属するセカンドチーム、U-21チームでプレーする育成方針も、シュツットガルトの公式ホームページ上であわせて発表された。 身長187cm体重80kgの恵まれた体躯と対人守備の強さを武器とするアンリには、複数のJクラブも卒業後の獲得に動いていた。しかし、海外志向が強かった逸材は、昨年9月に練習参加したシュツットガルトから届いたオファーを選択。国際移籍が可能になる18歳の誕生日を3月24日に迎え、満を持して新天地を決めた。
14日間のトライアルトレーニングで高評価
期待の大きさはシュツットガルトの公式ホームページ上に掲載された、トレードマークのアフロヘアをなびかせながらプレーするアンリの写真に反映されていた。 「2022-23シーズンの最初の新加入選手が決まりました」 こんな言葉で始まったファン・サポーターへ向けられたニュースは、シュツットガルトのユースアカデミーダイレクター、トーマス・クリュッケン氏による、アンリと複数年契約を結ぶ決め手になったコメントを紹介している。 「アンリは14日間のトライアルトレーニングで、一緒にいた私たちを納得させた」 早いケースでは2年生の段階で、卒業後のJクラブ入りを内定させる高校生もいるなかで、アメリカ人の父親と日本人の母親の間に神奈川県横須賀市で生まれたアンリの進路は、昨夏のインターハイを終えても未定となっていた。 もちろん複数のJクラブが、高さと強さを兼ね備えた逸材を獲得しようと動いていた。しかし、アンリは決断を保留したまま9月にヨーロッパへと渡り、シュツットガルトに加えてオランダ・エールディヴィジのAZの練習に参加していた。 期間が定められた練習でアピールできれば、正式なオファーにつながる可能性が高まる。前出のクリュッケン氏の言葉からはシュツットガルトで練習した14日間において、アンリの身体に宿る稀有なポテンシャルが認められた跡が伝わってくる。 「アンリは1対1における強さを持つセントラルディフェンダーで、フィジカル能力の高さに加えてスピードもあり、パスの供給能力も高い」 Jリーグを経由せずに、高校や大学からヨーロッパへ挑んだ日本人選手は少なくない。真っ先に思い出されるのは国見高から進んだ筑波大を2年で休学し、20歳だった2005年8月にエールディヴィジのヘラクレスへ加入したFW平山相太となる。 さらに2007年1月に中京大附属中京高のFW伊藤翔がフランス・リーグドゥのグルノーブルと、2010年12月には同じく中京大附属中京高のFW宮市亮がイングランド・プレミアリーグの名門アーセナルとそれぞれ契約。宮市は就労ビザが発給されなかった関係で、エールディヴィジのフェイエノールトへ期限付き移籍した。 その後もMF長澤和輝が2013年12月に専修大からブンデスリーガ2部のケルンへ、2015年9月には早稲田大1年生だったMF渡邊凌磨がブンデスリーガ1部のインゴルシュタットのセカンドチームへ、2018年8月にはDF小池裕太が流通経済大を休学してベルギー1部のシントトロイデンへそれぞれ加入している。 しかし、いずれもヨーロッパで、満足のいく結果を残したとは言いがたい。