寝たきりでも仕事ができる時代へ―分身ロボットが作り出す“役割”と“居場所”
手助けされる側も“役割”を求めている
――外出困難者の孤独を解消するには何が必要だと考えますか? 吉藤オリィ: 人助けしている側は「ありがとう」と言われると、ちょっと気分がいいですよね。でも、私自身も過去に介護を必要とした経験がありますが、介護される側からすると「ありがとう」と言えるのは本当に最初のうちだけ。何回も言っているうちに「ありがとうございます」という言い方に変わって、徐々に「いつもすいません」に変化し、最終的には「もう私のことは放っておいてください」と言いたくなる。自分のために時間を使わせてしまうことが申し訳ないと思ってしまうんです。 なぜ、そう思ってしまうのかというと、返せるものがないからなんです。助ける側は本当に何も気にしていないかもしれないし、生きているだけで十分と本気で思って言ってくれるかもしれない。でも、助けられる側は、座っているだけ、寝ているだけでいるのはつらいんですよね。 そこで必要なのは“役割”です。役割があると、ここが自分の居場所だと思えるんです。自分には役割があって「自分はこれをするためにここにいるんだ」ということを何の負い目もなく言える状態をつくることが、孤独の解消になるのではないかと。 私自身も小さい頃、人と話すことは苦手だったけど折り紙でおもちゃを作って学校に持っていったら、クラスメイトたちがそれで遊んでくれたんです。折り紙のおもちゃを提供する役割を担ったことで、自分の居場所をなんとなく確保していました。でも、クラスの中でゲームボーイが流行したことをきっかけに、私が作ったしょぼい折り紙のおもちゃには見向きもされなくなって……。結局、私は居場所を失って徐々に引きこもり、人と話すこともできなくなっていったんです。不登校状態だったとき、一番つらかったのが、みんなと一緒に遠足に行けなかったことでした。もし、その時OriHimeがあったら、一緒に遠足の思い出を作ることができたと思いますね。 ――コロナ禍によって孤独を感じる人にも分身ロボットは役立ちそうですね。 今はコロナ禍で言わば“一億総外出困難”状態なので、分身ロボットの用途も多様化しています。先日は、海外にいる友人をOriHimeでつないで、浅草に行って一緒に人力車に乗って観光してきたという方がいました。他にも、海外で行われる友人の結婚式に分身ロボットを使って結婚式に参列することもできます。実はすでに60回ほど結婚式でOriHimeが活用されています。遠隔で結婚式に参列しても、新郎新婦にも参列していたという記憶がしっかり残るんです。最近ではコロナ禍で実家に帰れない、お墓参りに行けない、葬儀に出られないという場面でも使われるようになってきています。