「大人を救うことが子どもを救うことになる」日本に救われたサヘル・ローズが考えるいじめと今できること #今つらいあなたへ
イラン出身で、日本で俳優として活躍するサヘル・ローズさん。幼い頃、孤児院で育ち、8歳の時に養母と来日。その後、路上生活やいじめを経験しました。自身の凄絶な過去の経験から、子どもたちが発するSOSに手を差し伸べるためには「大人も救われなければならない」と言います。サヘルさんがそう訴える理由とは――。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
“おせっかい”な人たちに救われた小学生時代
――サヘルさんは幼い頃、路上生活を送った経験があるとうかがいました。 サヘル・ローズ: 来日してしばらくたった頃、母と私は本当に困窮してしまい、住むところがなくなって2週間ほど公園で路上生活をしたことがあるんです。そこから救ってくれたのが、当時通っていた小学校で調理員をしている方でした。その給食のおばちゃんは、私たちに食べ物をくださったり、ご自宅にかくまって下さっただけでなく、ビザの変更手続きのための弁護士費用を負担していただき、アパートの保証人にまでなってくれたんです。 当然ながら、その給食のおばちゃんは私の過去も知らないし、母がどういった状況かも知らない。でも、その方は、私たちを信じて手を差し伸べてくれた。目の前で苦しい人がいるから、自分にできることはなんだろうと考えて信じてくれた。見ず知らずの人の保証人になるって、すごい勇気のいることだと思うんです。 ――その方のおかげで、今のサヘルさんがある。 サヘル・ローズ: はい。その給食のおばちゃんのおかげで私と母は再出発することができました。ありがたいことに通った小学校には、他にも理解のある先生方が多かった。言葉が分からなくて教室に行けなかった私に、校長先生が「もう教室に行かなくていいから」と言ってくれて、校長室で数ヶ月間1対1で向き合って日本語を教えてくれました。 ――教室に行くのに抵抗感があったんですね サヘル・ローズ: 苦しかったですね。来日した頃は、言葉が分からないし、頭にヒジャブを着けていたので服装も皆とは違ったし、ハラールじゃない給食も食べられなかったんです。 日本には“郷に入っては郷に従え”という言葉があるように、みんなと同じことをしなければならない。給食や服装だけでなく、「ランドセルを買ってください」「家庭科に必要な材料を用意してください」ということも、私たちにとってはすごく厳しいことでした。でも、先生の娘さんのお下がりのランドセルを使わせてくださったし、先生たちがお金を出し合って授業に必要なものを用意してくださったんです。 最初に出会った給食のおばちゃんも含めて、私と母は日本に来てから、他人でも困っていたら手を差し伸べてくれる“おせっかい”な人たちに救われてきました。私を「外から来た人」ではなくて、「この国で一緒に生きていく人」として見てくれた。当時お世話になった方々とは今もずっとやり取りをしているのですが、家族のように見てくれることがすごくうれしくて。人って血の繋がりで家族になっているわけではないんですよね。お互いが人として繋がり合って心からお互い愛し合えるんだと教えてくれたのは、日本の人たちなんです。