クラブW杯日本開催返上の“功罪”
現時点で12月における感染状況が予測できず、有観客での開催となった場合に世界中から集まるファン・サポーターの安心安全を保証できない。有観客でも入場者数に制限が設けられる可能性が高く、大会全体の収支で大幅なマイナスが避けられない状況などがリスクとしてあげられ、協議を重ねてきたFIFAも理解を示した。 違約金や補償金は発生しないことで合意に達したが、失われたものも小さくない。 ハイレベルの戦いが日本国内で見られず、さらには連覇を目指す川崎フロンターレと猛烈な追い上げを見せている横浜F・マリノスのマッチレースと化しつつある今シーズンのJ1王者が、開催国代表としてクラブワールドカップで戦う姿も見られなくなった。 現時点で最後の日本開催となっている2016年大会を振り返れば、開催国代表の鹿島アントラーズが決勝へ進出。ヨーロッパ王者レアル・マドリード(スペイン)に屈したものの延長戦にもつれ込む死闘を演じて日本中を熱狂させ、同時に世界を驚かせた。 それでも、創立100周年記念事業の一環だったクラブワールドカップ開催を断念したJFAは、結果として生じる国内スケジュールの空白をプラスに転じさせた。 元日に国立競技場で決勝が予定されていた天皇杯JFA第101回全日本サッカー選手権大会の日程を前倒しさせ、クラブワールドカップが開幕後に予定されていた12月12日に準決勝を、閉幕する同19日に決勝を行うと9日に発表した。 決勝の舞台は国立競技場で変わらず、準決勝の会場などは追って発表される予定となっている。 サッカーの普及や人気拡大を思案していた当時のJFA幹部による、明治神宮への初詣帰りの1%でもいいから来場してもらえないかという切実な思いから、元日の旧国立競技場での決勝が初めて開催されたのは半世紀以上も前の1969年までさかのぼる。 以来、元日の風物詩として定着してきた天皇杯決勝が、元日以外に開催されたのは2014年度と2018年度の2大会だけ。いずれも翌年1月に日本代表が臨むアジアカップが開催されるための特別措置だったが、今回も代表戦と密接にリンクしている。 今月から開幕したカタールワールドカップ出場をかけたアジア最終予選は、年内に6試合、来年3月末までに4試合と全10試合を戦う。新型コロナウイルス禍でタイトなスケジュールを余儀なくされた状況下で、従来は国際Aマッチデーが設定されていなかった来年1月27日と2月1日にも試合が組まれている。 日本も例外ではなく、いずれもホーム(会場未定)で中国、サウジアラビア両代表と対戦する。7大会連続7度目のワールドカップ出場権獲得へ向けて大詰めを迎えている状況が予想されるなかで、国内組の選手に対して十分なシーズンオフ期間を確保してほしいと、Jクラブや日本プロサッカー選手会から天皇杯の前倒しが要望されていた。