「儲からない地域で、例外をどう作るか」が大事だ…。実はホテル事業が大きく成長しているカタログ通販の「ベルーナ」、“道楽”から始まり、“浪漫”で成長した舞台裏
M&Aでは、従業員ごと引き継ぐケースとそうでないケースがある。従業員が残っているケースではさまざまな軋轢の可能性も生じるものの、この人材確保の苦労と比べれば、歓迎材料になるそうだ。安野社長は、プライベートでとある離島のホテルに泊まった際のエピソードを教えてくれた。 「そのホテルでは、従業員が今にも都心に帰りたくて泣きそうな顔で働いていたのです。あまりに気の毒で、そんなロケーションではホテルをやらないと誓いました。
同じ離島といっても、弊社がマリオットホテルに運営を委託する『ザ・ウェスティン・モルディブ・ミリアンドゥーリゾート』では、世界20カ国の人が働いていることで、ロケーションとは異なる楽しさが生まれています。どんな理由であれ、従業員が笑顔で働けるかが一番大事です」。 しかしながらもちろん、笑顔=楽ということではない。オペレーションについてはコロナ禍以後、清掃をアウトソーシングする以外は、社員もアルバイトも、マルチタスクでさまざまな仕事をできるように推進し、コスト削減につなげている。コスト削減といえば、駆体や客室のフォーマット化により低コスト化を実現しているホテルも昨今は多いが、「それはしない」ときっぱり。そこにも、「浪漫」が関わっている。
「新設するホテルは1軒ずつデザイナーを入れて、それまで建てたものとはひと味違った施設になることを目指しています。お客様が、ほかでもない『このホテルにきて良かったな』と浪漫を感じられることが大切だからです。立地、客室、雰囲気、すべてに浪漫は関わってきます。そこは強く意識しています」 ■「道楽」から主力事業へ 並々ならぬ浪漫への思い入れを聞いたところで、少し時代を遡り、ベルーナのホテル事業のはじまりを説明しよう。
約20年前、元々不動産業に関心があった安野社長の元へ、ビル買収の話が持ち込まれたのがはじまりだったそうだ。場所は渋谷の桜丘町。 230坪の土地で、取得してから賃貸経営、マンション建設、ホテル経営で迷ったが、「ホテルが面白いだろう」と、105室の都市型ホテルを建てたのだという。 だが、当時ホテル経験はゼロ。「とりあえず、全従業員を派遣社員で経営してみたら、意外とうまくいったのです」と回想する。これを皮切りに赤坂、新宿と次々にオープンし、順調に経営実績を重ねていった。