「儲からない地域で、例外をどう作るか」が大事だ…。実はホテル事業が大きく成長しているカタログ通販の「ベルーナ」、“道楽”から始まり、“浪漫”で成長した舞台裏
ちなみに今日まで、ホテル経験者の募集をしたことは一度もないそうだ。たまたま中途採用の募集に応募してきた人はいたそうだが、役職、管理職採用はゼロ。例外として、専門職である調理関係の人材は経験者を雇用しているという。 26施設を経営する現在は、毎年新卒を100人前後採用。人の入れ替わりで出向社員は減りつつあり、ほとんどがプロパーの人材だ。ただ、中核を担うホテルの総支配人は、全員が出向メンバーで構成されている。
また、前述した通り人材を集めるのが非常に難しくなっているため、自社がホテルを展開するスリランカ等東南アジアのネットワークを使って海外からも人を集めている。雇用している外国人は200人を数え、全体の2~3割に及ぶ。 いまでは、ホテル事業に従事するは、全社員約4000人中1100人(2024年3月期時点)に。しかし、まだ社内的には通販事業がメインで、ホテル事業はサブ的な位置づけ。社内でのステータスは、あまり高くないそうだ。
だが、安野社長は、「売り上げが伸びて認知度は上がっています。今後の成長に伴い、ホテル事業に従事する社員への注目度が上がってくるのでは」と予測する。 ■500億円売上高への成長シナリオ これから、ベルーナのホテル事業はどうなっていくのか。通販カタログ業界は、紙も印刷代も物流も値上がりが続き、逆風が吹き荒れている。右肩下がりの売り上げを上げていくのは相当難しい状況だ。だから、無理はしない。 「カタログ事業については、『徐行運転、低速走行、法定速度、スピード違反防止』と言っています。ゆっくり手堅くやっていくつもりです。でも、ホテル事業は思い切ってアクセルを踏みます」と言うと、安野社長の眼光が鋭くなり、「目標は、3、4年後に売り上げ500億円です」と言い放った。
決して夢の数値ではない。2025年に創業予定の札幌駅北口、小樽を含めて建築中、そしてこれから建設予定のホテルが3、4軒あるそうだ。それが完成すれば500億円の達成が視野に入る。その先には、さらなる成長ステージが待っていると安野社長は見据える。 しかも、成長が見込まれる事業はホテルだけに限らない。同社では、呉服関連事業をはじめ、ワイン、日本酒、そしてナースのための通信販売事業も行っており、「それぞれの分野で日本一の売り上げを誇っている」と安野社長。そういった専門性の高い分野では、今後もグンとアクセルを踏み込むそうだ。
笹間 聖子 :フリーライター・編集者