「儲からない地域で、例外をどう作るか」が大事だ…。実はホテル事業が大きく成長しているカタログ通販の「ベルーナ」、“道楽”から始まり、“浪漫”で成長した舞台裏
■「この地域で、うちだけは稼ぐ」意識で 「浪漫を感じる」とはどういうことか。ベルーナでは投資物件の選定において、外部から来た情報を基に、まずは幹部が現地に行って調査する。そこで期待が持てそうであれば、安野社長も必ず足を運ぶそうだ。 そして、五感を働かせながら物件を回り、「浪漫を感じるか」「気持ちよく仕事ができると感じるか」に耳を澄ませる。この2つがあれば、「損をしてでも、とにかくこのホテルをなんとかしてやろう」という気持ちが沸き起こるのだとか。実際、そう感じた物件は業績を伸ばしているという。
もちろん、M&Aの判断材料にはマーケット状況や費用対効果、収益性なども含まれるそうだが、それをクリアすると最後は、自分自身の「浪漫」の感覚が決め手となるのだ。 「M&Aの話がくるリゾートホテルは、たいていロケーションがいいんです。福島にある『裏磐梯レイクリゾート』も、北海道の『定山渓ビューホテル』も、おそらく界隈で一番よいロケーションで、浪漫を感じました。だから躊躇なくリノベーションができたんです」と振り返る。
そして、そうやって腹をくくって投資を決断した後は、「その地域でほかのホテルが儲からなくても、うちだけは確実に稼ぐためにどうしたらいいか」と戦略を練る、とも。 「基本的に、地方の旅館やリゾートホテルはそこまで儲かりません。それぞれの地域でナンバーワンを目指すくらいでないと、高収益は見込めないのです。定山渓でも、当社が全体の約40%の集客を担っています。 儲からない地域で、例外をどう作るかを突き詰めて考えています。高収益を実現するには競争力が必要です。競争力を生みだす改善、改良、改革のために、従業員のモチベーションをどう高めるかを常に意識して経営しています」
■浪漫を妨げる要因は「人」に 安野社長が実際に視察してM&Aをする割合は、3、4軒に1軒程度だ。ただ、最近は浪漫を感じるような物件が減っていると嘆く。M&Aをする企業が増えて物件確保が難しくなったり、宿泊客がホテルに求めるレベルが高くなっていることが要因だ。 加えて、大きな理由に人員確保の難しさがある。「この立地で人を確保できるか」を考えたときに躊躇する物件には、浪漫を感じても投資できないのだ。 「努力に努力を重ねて人を集めないといけないか、少しがんばれば集められるのか。このふたつには、かなり差があります。人が集められないならやめたほうがいい」と安野社長は苦い表情を浮かべる。