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どう声かける?周囲に家族や友人が自死した人がいたら…知っておきたい支援 #今つらいあなたへ

海原純子博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授
(写真はイメージです)(写真:アフロ)

家族や親しい人との死別は、非常に大きな喪失体験であることは間違いがありません。あるいは直接の面識はなくても、亡くなった方についてよく知っている場合などもその方の死は衝撃になります。またその死が予期されていない場合や、自死であった場合はさらに大きな心の痛手になります。周囲にそうした方がいる時、私たちは、どうやってその方たちを支え、必要な手助けをすればいいのでしょう?「どう声をかけていいかわからない、声をかけて逆に傷つけてはいけないし」と悩む方もいます。手助けして支えたいという思いを伝える方法について考えます。

「死による別れ」が心に与える影響について

4つのプロセス

家族や友人の自死による死別体験を持つ方をどうやって支えるか、を考えるとき、まず一般的に死別が心にどのように影響するかについて知ることが必要です。こうしたプロセスについては、細かく分類する学者もいますが、ここでは心理学者のJ・W・ワーデンが示し、参考にされている4つのプロセスについてお話しします。

まず最初に死を受け入れられず拒否する感情、怒りやうつ気分、罪悪感などが起こります。こうした死を受け入れられない状況は人により異なりますが、この時期を経て、死を受け入れ悲しむ悲嘆の感情が起こります。こうした悲嘆の時期はとても苦痛を伴うのでつい悲しみを抑圧して我慢することもありますが、それはかえって悲嘆の時期を長引かせたり、うつに陥らせたりします。さらに悲嘆の感情を乗り越えると、新しい環境に適応していく時期、そして新たな生活に踏み出す時期へと続きます。

(画像制作:Yahoo! JAPAN)
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こうした時期にはある程度順序があるものの、一つが終り、次に行くとは限らず、行ったり戻ったりすることもあります。それぞれのプロセスをどうやって手助けしていくかが大事です。

更に自死は、あらゆる死別体験の中で最も大きな衝撃になるとされています。そしてその衝撃には罪悪感がともなうものです。自死の場合は、突然ではあってもその前に何らかの予兆があったはずで、その予兆に気づくことが出来ず、「どうして止められなかったのか」と自分を責める罪悪感と社会的偏見が加わることが多いのです。

こうしたことから、グリーフケアについて研究している学者によると、自死をした人の家族は、亡くなった人からも、社会からも拒否されたような孤独な気分に陥ることがあると指摘しています。ですから孤立感を軽減するような支援が不可欠です。つまり自死で家族や友人を亡くした方には特に罪悪感をどう支えるかが大事なポイントといえます。

そっとしておいてほしい方に必要な配慮

身近に大事な方を亡くされた方がいると何か声をかけなくてはと思う方が多いと思います。でも「しばらくそっとしておいてほしい」と思っている遺族の方は多いことを知っていただきたいと思います。「心のふたを無理にこじ開けない」ことが大事で、でも必要な時はそばにいるよというメッセージを送ることが大事です。「手伝えることがあったら連絡してね。」という一言を伝えるのも助けになります。

「眠れなくて睡眠薬を多く飲んでいるようで心配だ、時々舌がもつれて話しかけてもいつもと違う時がある。」と相談を受けることがあります。身近な方の死という大きなストレスでお酒の量が増えたり、薬物に頼ってしまうこともありますから、こうした心配がある時は声がけして医療機関を受診することなどを勧めてください。また急に家を引っ越したり会社を辞めるなどの突発行動をとる人もいます。大きなストレスを受けた後には重大な判断は先送りにした方がいいので、相談にのれる体制が必要です。

「死別に関する5つの誤解」

死別に関してはいくつかの誤解があります。ここでは特に知っておきたい誤解をお話しします。こうした誤解に気がつかないと不適切な声がけをすることがあります。

(画像制作:Yahoo! JAPAN)
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喪失の悲しみは時を経ても消えるものではありません。時を経ると、思い出し方や痛みの度合いは変わるかもしれませんが、消えてなくなるという種類のものではないのです。喪失の悲しみは簡単に短期間で乗り越えることがいいのではなく、悲しむときは、悲しいという感情を表現していく事が大事です。

もう一つ知っていただきたいことは、家族の死によって残された家族がより強く一体感を持つのではないかという考えに対するものです。もちろんこうした場合もあるのですが、家族の死をどのようにとらえるか、その悲しみの度合いや衝撃、反応は人により違いがあるため、かえって家族間で気持ちがすれ違うこともあります。

コミュニケーションの妨げになる声がけの言葉

ではどのような声がけにより死別体験のある方を傷つけるかについてまとめてみます。悪気はなく善意から出た言葉であるにもかかわらず相手を傷つけてしまうこともあります。さらに善意から思わず出た言葉なので相手も怒るわけにもいかないという困ったことになります。こういうことを言われて特に嫌だったという3つは次のような言葉です。

1.頑張ってください

つい口に出てしまいがちな言葉ですが、安易に使うのは避ける必要がある言葉です。

2.泣かないで・早く元気になってください

「こう言われたらつらい顔を見せられない」「相手が悪気でないことはわかるから余計困る」とおっしゃる方が多いです。

「『あなたが泣いていては他の家族みんなが苦しい』という声がけをされてつらかった、いったい自分はどこで泣けばいいの?」という声もききます。「あなたは母親なんだから」「あなたは男として悲しんでいる場合ではない」などの言葉も同様です。

3.時が過ぎれば楽になるから

これもつい言いがちですが、言われた方は決して忘れられないのです。「何年たっても悲しい。もちろん悲しみの質は変わるけど、時間は解決の手段にはならない」という声を聞きました。

その他、「あなたの気持ちはわかるけど」という言葉も「わかるわけはないでしょう」という思いが浮かんでしまうものです。

逆にほっとした言葉は「何か手伝えることがあれば連絡して」とメールが来て、さらに「返事は気にしないでいいからね」というのも気遣いを感じたといいます。

危機と悲嘆への対応~言葉だけに頼る必要はない

ではこうしたことを踏まえてどのように支えるかについて考えていきたいと思います。まず、つらい状況にある人を前にするとあなたは、早く元気になってほしい、という気持ちから、「何か言わなくては」と思うかもしれません。しかし、言葉を無理に言おうとしなくでもいいのです。あなたが支援している、必要な時は呼んでほしい、という気持ちをしっかりと込めてそばにいる事が大事です。場合により背中をなでたり手を取ったりして気持ちを伝えていただくこともできます。

そしてその方が何か話をしたら、聴くことが大きな支援になります。気持ちを話せる場がある、安心して話せる相手がいる、さらに自分の気持ちに共感してくれる人がいる、ということが大きな支援になるはずです。

家族や友達が自死した方について特に知っておきたい支援について

1.気持ちを話せる相手と場所・罪悪感からの解放

家族や友人が自死した場合、亡くなった方からも社会からも拒絶されたという孤立感を感じることがあり、また自分が救えなかったという罪悪感を感じるものです。こうした孤立感を和らげるように「そばにいて安心して話を聴く」場があることが手助けになります。 亡くなった方にもっと何かしてあげたかったという罪悪感が長く続くと心身の状態が悪化することがあります。罪悪感からの解放は大事なことですが、カナダなどでは、亡くなった方に手紙を書くなどの方法もなされています。手紙を書くことで自分の気持ちを整理し、それは誰にも見せず後で破り捨てる、という方法です。

2.ネガティブな同一化の防止

例えば、いじめ自殺などが報道されると、同じような境遇にある人が自死しか道はないような思いになり同一化して自死の連鎖が起きることがあります。対処法として、まずは言葉にしてつらい気持ちや悲しい思いを表現することをおすすめします。ただし、SNSを利用していて気持ちが落ち込む場合はしばらく投稿も閲覧も控えましょう。テレビや新聞、インターネット上の関連ニュースをしばらく遮断するといった対策も有効です。

まとめ

支援には直接支援、情報支援、共感支援、援助への期待という支援があります。直接話を聴くほか、支援を行っている場所や機関を紹介するサイトなどを伝えるという情報支援、話を聴き共感し支える支援、さらに困った時は支援してくれる場があるということを伝える支援などがあります。

(画像制作:Yahoo! JAPAN)
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【この記事はYahoo!ニュースとの共同連携企画記事です。】

博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授

東京慈恵会医科大学卒業。同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008-2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。日本医科大学医学教育センター特任教授(~2022年3月)。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。被災地調査論文で2016年日本ストレス学会賞受賞。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。医学生時代父親の病気のため歌手活動で生活費を捻出しテレビドラマの主題歌など歌う。医師となり中止していたジャズライブを再開。

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