【大学トレンド】いまどきの「獣医学部」 動物実験を減らす「VR実習」、病院以外への就職は?
ペット以外の動物の獣医師が不足
獣医師というと、動物病院に勤務し、犬猫などのペットを診療するというイメージを持つ人が多いでしょう。麻布大学の卒業生で動物病院に就職したのは62%(過去5年間)。続いて公務員が11%、NOSAIが10%です。公務員は農林水産省や環境省などの国家公務員や、家畜保健衛生所や食肉衛生検査所などの地方公務員として働いています。田原口教授は「獣医師部 について正しく理解されていない面がある」として、次のように話します。 「獣医師の管轄は農林水産省です。つまり食の安全や安定供給を担うことが、獣医師の 役割なのです。例えば、スーパーなどに 並ぶお肉を安心・安全に食べられるのは、食肉衛生検査所に所属する獣医師が検査をしているからです。 獣医学は、ペットだけに止まらず、家畜やその他の動物に関わる医療や疾病の治療、予防ならびに管理を扱っています」 ペットの獣医師を目指す学生が多い一方で、牛、馬、豚や鶏など産業動物の獣医師は不足傾向にあります。この対策の一つとして、一定期間、産業動物獣医師として勤務することを条件に、修学資金を給付する制度などもあります。 「ペットの獣医師になることを目指して入学した学生でも、さまざまな分野に触れるうちに産業動物や食品衛生に興味が出て、公務員になる場合もあります。5年次になると進路に悩む学生が多いのですが、本学は各分野の現場を経験してきた教員がそろっているので、学生のさまざまな相談に乗っています」(田原口教授) 麻布大学は大動物、小動物とも同程度に学べますが、一般的に都市部にある大学は小動物に強く、地方にある大学は大動物に強い傾向があり、進路にもその傾向が反映されます。ただし、複数の大学が教育資源を共有しあう「共同獣医学課程」という仕組みがあります。例えば産業動物獣医療が特色の岩手大学は、小動物の高度な医療が特色の東京農工大学と連携し、獣医学をバランスよく学べるようになっています。 幅広い分野で求められる獣医師の仕事。動物や人の健康を守るという専門性を武器に、6年間を通して自分に最適な進路を見つけていくことが重要です。
朝日新聞Thinkキャンパス