【大学トレンド】いまどきの「獣医学部」 動物実験を減らす「VR実習」、病院以外への就職は?
VR実習で、動物実験を減らす
2年次から動物の臓器や組織などを観察する解剖学の実習が始まり、学年が上がると検査や治療、手術など、実技の経験を積んでいきます。2020年からは獣医学系大学では初めて、VR(仮想現実)を活用した実習を導入しています。動物を使った実習を繰り返す必要がなくなるため、動物個体の負担を軽減することができます。また、同時に多数の学生が3D動画を視聴できる教育面でのメリットもあります。大賀さんもVRによる実習を経験しました。 「例えば麻酔薬の量が多すぎたり、少なすぎたりしても、やり直しができるので適切な量になるまで繰り返すことができます。動物を使った実習ではあり得ないことですし、動物実験を減らそうという考えは、動物倫理に配慮した、いい取り組みだと思います」 5年次からは、附属動物病院での臨床実習がスタートします。約3週間かけて内科、外科、眼科など各診療科を回り、獣医師の処置を間近で見学するほか、場合によっては手伝うこともあります。 「飼い主さんと初めて接して、ペットのつらい現場に立ち会うこともありました。『医療面接』という授業の中では、飼い主さんとのコミュニケーションについて学んできました。でも、獣医師が飼い主さんに寄り添ったり、励ましたりしている姿を実際に見て、現場で実習することの大事さを感じました」 同大学には40の研究室があり、大賀さんは3年次から獣医衛生学の研究室に所属しています。家畜の健康や生産性の向上について研究し、現在は卒論に向けた研究に取り組んでいます。 大賀さんは、オープンキャンパスの学生スタッフ、学祭実行委員としても活動しています。研究や実習で忙しいなかで、こうした活動に積極的に参加するのは、「少しでも大学の力になりたい」という思いが強いからです。日本獣医学生協会(JAVS)にも所属し、他大学の獣医学生とイベントやボランティア活動を通して交流しています。 牛の獣医師になるという目標は変わっておらず、勉強はこれからが大変になりそうです。6年次になると就職活動がスタートし、卒業試験に合格すると翌年2月に獣医師国家試験が待ち構えています。 「卒業後はNOSAI(農業共済組合)、あるいは大動物診療を専門とする動物病院に就職して診療や繁殖の経験を積み、いずれは祖父の牧場で生産者になりたいです。祖父も楽しみに待ってくれています」 獣医師国家試験の合格率は、新卒の場合、例年90%を超えますが、2023年は新卒者の合格率は81.1%まで下がり、麻布大学は83.7%でした。麻布大学獣医学部獣医学科長の田原口智士教授は、こう話します。 「コロナ禍で実習が減ったり、オンライン授業になったりした影響があるかもしれません。本学では、卒論提出後、国家試験に対応した授業を2カ月間みっちり行い、合格に向けてサポートしています」