なぜ大谷翔平はDH専念でもMVP満票選出を果たせたのか? ハードヒット率、バレル率が示す「結果」と「クオリティ」
ハードヒット率、バレル率でもメジャー2位、リーグ1位を記録
翻って、今季の大谷はどうだったか。まずは2024年に残した「わかりやすい」スタッツを見てみよう。 打率 .310(リーグ2位) 本塁打 54本(リーグ1位) 打点 130(リーグ1位) 得点 134(メジャー1位) 盗塁 59(リーグ2位) 出塁率 .390(リーグ1位) 長打率 .646(リーグ1位) OPS(出塁率+長打率) 1.036(リーグ1位) 長打数 99本(メジャー1位) 塁打 411(メジャー1位) ISO .336(リーグ1位)※ 本塁打率 11.78(リーグ1位) ※ISO=長打率-打率で表す指標で、打者の純粋な長打力を示す まず、この時点で本塁打、打点の主要打撃部門二冠のみならず、10個の指標でリーグトップの「結果」を残している。ここでポイントになってくるのは、本来DHの選手が苦手とされる「走」についてもリーグ2位の59盗塁をマークしている点だ。通常、DHというポジションは守備・走塁が不得手で打撃に特化した選手が任されるのが一般的だ。しかし、大谷は違う。守備や走塁が苦手どころか、本来であれば投手としてもメジャー屈指の実力を持つ唯一無二のプレイヤーだ。今季は投手として「投げられない」状況で打者に専念するというイレギュラーが起こったため、MLBの歴史を紐解いても稀有な「走れるDH選手」が誕生したことになる。 さらに、プレーそのものの「クオリティ」はどうだろうか。近年のMLBでは打者の「打球速度」がかなり重要視されている。ルール変更で極端な守備シフトが禁止されるようになったとはいえ、それでも各打者の打球方向などがデータ化され、各球団がそれに対応したシフトを組んでくる。そうなったとき、「野手の間を抜ける」ために最も必要なのが打球速度だ。また、打球速度は飛距離とも比例するため、本塁打数との相関関係も高くなる。 以下は2024年のメジャー全体の平均打球速度ランキングになる。 1位アーロン・ジャッジ(ヤンキース) 96.2マイル(約154.8キロ) 2位大谷翔平(ドジャース) 95.8マイル(約154.2キロ) 3位オニール・クルーズ(パイレーツ) 95.5マイル(約153.7キロ) 大谷の平均打球速度はメジャー全体で2位。ナ・リーグではトップになる。また、メジャーでは打球速度が95マイル(約152.9キロ)を超えると「得点価値が一気に高くなる」と考えられ、これを「ハードヒット」と呼ぶが、今季大谷が放ったハードヒットの数はメジャートップの288本。また、全打球のうち、ハードヒットの数が占める数値を「ハードヒット率」と呼ぶが、これも60.1%でメジャー全体2位、リーグではトップを記録している。 加えて近年のMLBでは長打/本塁打になる確率が高い打球速度と打球角度の組み合わせを「バレルゾーン」と呼び、各打者はいかにそのバレルゾーン内に収まる打球を放つかを意識しているのだが、打席数におけるバレル率(1打席に対し、どのくらいの確率でバレルゾーン内の打球を放てるか)でも大谷は14.1%、全打球に占めるバレル率21.5%と、ともにメジャー2位、リーグ1位を記録している。ちなみに、大谷の上を行くメジャートップのバレル率を誇ったのは、アメリカン・リーグMVPを満票で受賞したジャッジだ。