なぜ大谷翔平はDH専念でもMVP満票選出を果たせたのか? ハードヒット率、バレル率が示す「結果」と「クオリティ」
なぜ昨季二冠のオルソンはMVPを獲得できなかったのか?
アメリカでは特に近年、野手を評価する際に打撃だけではなく走塁、守備での貢献度も加味される傾向が強い。また、打撃面についても、いわゆる「打率」「本塁打」「打点」のような日本でも馴染みのある指標以外の数値が大きく評価される。 わかりやすい例が、昨年のナ・リーグMVP投票結果にも表れている。昨季のMVPはアトランタ・ブレーブスのロナルド・アクーニャ・ジュニアが受賞したが、彼の主要打撃成績は以下の通りだ。 159試合 打率 .337(リーグ2位) 本塁打 41(リーグ3位) 打点 106(リーグ4位) 盗塁 73(リーグ1位) アクーニャはMLB史上初の「40-70」を達成する偉業を成し遂げたが、実は打撃成績だけで言えば彼に匹敵する数字を残したチームメイトがいた。それが、マット・オルソンだ。オルソンの昨季打撃成績は以下になる。 162試合 打率 .283 本塁打 54(リーグ1位) 打点 139(リーグ1位) 盗塁 1 タイトルの数だけを見れば、アクーニャは盗塁の一冠、オルソンは今季の大谷同様、本塁打、打点の二冠に輝いている。しかし、MVPの投票結果はアクーニャが1位票を満票で獲得。オルソンは2位どころかドジャースのムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンに次ぐ4位に終わっている。 これがもし日本なら、「打撃二冠王」のオルソンにもう少し票が入っていたのではないか。ただ、特に近年のメジャーではいわゆるタイトル獲得などのわかりやすい「結果」だけでなく、走攻守すべてにおいてプレーの「クオリティ」が重要視される傾向が強くなってきている。オルソンは確かに優れた打撃指標を残したが、ポジションが一塁手であり守備指標も決して高くなかった。一方のアクーニャはメジャー屈指の外野手として守備での貢献度も高く、さらには73盗塁に代表されるようにメジャーでも屈指のスピードを誇った。打撃面で見ても、打者の総合力を示すと言われるOPSでオルソンが.993、アクーニャは1.012とアクーニャに軍配が上がる。 わかりやすい「結果」だけでなく、それに付随する「クオリティ」も評価され、さらには打撃以外の守備、走塁面も重要な評価基準になる。これが過去、メジャーリーグで一度もDHの選手がMVPを受賞できなかった最大の理由と言えそうだ。