昨季11.5差を逆転されたソフトバンクはなぜ雪辱のV奪回を果たせたのか
打線に目を向けると、偶然にも昨年とチーム打率は.261で同じなのだが、本塁打数が114本から150本に飛躍的に増え、代わりに盗塁数は107個から67個に減った。 いわばベンチはリスクのある動き方をせずとも、ドッシリと構える王道野球ができたのである。 このデータを象徴するかのように優勝を決めた試合で、デスパイネが33号、柳田が30号のアベックアーチ。ケガもあり昨年は、18本と低迷した柳田が12本プラスさせ、昨年はチームにいなかったデスパイネが33本と量産するのだから、チーム本塁打数が、飛躍的にアップしているのも無理はない。 うまく投打がかみ合ったのである。 16勝4敗。一人で12個も貯金を作り優勝投手となった東浜が、優勝会見で「出来過ぎだと思ってます。これだけの勝ちをつけてもらえたのは、点を取ってくれる野手や、僕の後に投げてくれる中継ぎの人たちのおかげ。素直に感謝したい」と語ったが、チームにプラス連鎖が生まれ東浜のようなエースが誕生したのである。 前述の池田さんはソフトバンクというチームの背景にある組織力に注視する。 「今年は、武田、スアレス、五十嵐、和田、高谷、内川ら8人も主力にケガが出た。工藤監督はかなりやりくりに苦しんだ。ローテーション投手と4番がいなくなったのだ。しかし、そこにうまく若手をはめこんだ。ソフトバンクは3軍制を敷き、育成をメインに選手層の充実を図っているが、その選手層の違いが、ペナントレースを戦う上で際立った。成長した甲斐や、育成上がりの石川、3年目の松本らが戦力になった。これがソフトバンクというチームの組織力だと思う。そういう若手が目立っている間にケガ人が徐々に終盤に帰ってきた。8月に落ちた楽天と対照的に、8月下旬から勝負の9月にソフトバンクのチーム力が上がってきた理由は、そこにあると思う」 ペゲーロを2番に入れ、ウィーラー、アマダーと3人を並べた強力打線で旋風を巻き起こしていた楽天を8月18日から仙台で3タテ、9月1日からのヤフオクでの3連戦でもまた3タテを食らわせて引導を渡したが、東浜、千賀、武田、東浜、千賀、和田と、いずれも表のローテーションをぶつけて守り勝った。 優勝会見で柳田は、「去年の秋からの努力が報われた」と言った。 池田さんは、ブレイクした東浜についても、「彼は、昨秋からウェイトトレーニングに本格的に取り組み、体幹を鍛えていた。その成果は球速アップと共にぶれないフォーム作りにつながり、コントロールの精度につながった。9月のこの時期までバテずに1年間ローテーションを守ったスタミナとも無縁ではないと思う。残り2試合で18勝するんじゃないか」と言う。日ハムに負けた悔しさをそれぞれが昨秋から形に変えていたのである。 工藤監督は「まず夢はかなえたが、最終目標は日本一奪回」と次なる目標を口にした。 だが、シーズンはまだ13試合を残し89勝41敗の成績で、1955年に南海ホークスが作った99勝のシーズン最多勝利数更新の可能性が残っているのだ。 「残り13試合で10勝3敗という数字は、今のソフトバンクなら不可能ではないのでは」と池田さん。クライマックスシリーズを前に、もうひとつの挑戦が残っているのである。