昨季11.5差を逆転されたソフトバンクはなぜ雪辱のV奪回を果たせたのか
ソフトバンクが2年ぶり20度目の頂点に立った。マジック「1」で迎えた敵地、メットライフドームでの西武戦に7-3で快勝。西武時代に何度も美酒に酔った場所で7度宙に舞った工藤監督は、恒例の監督優勝インタビューに臨み、「今は、正直言ってほっとしています。リーグ優勝を昨年はできず、クライマックスでも負けて、1年弱、このことだけを思って……」とまで言うと、涙があふれ、少し言葉に詰まり「……1年やってきました。みなさん、ありがとうございました」と続けて上を向いた。 まるで何かに引き寄せられるかのように「16」尽くしの1日になった。 2015年に自らが作った史上最速記録を1日更新する9月16日に背番号16の東浜がマウンドに立って16勝目をマークして優勝を決めた。もっと言えば、9月1日にマジック「16」を点灯させてから16日目。西武と獅子(しし)をひっかけて4×4(しし)=16という球団関係者までいた。 勝負の世界では、特定の数字を関連づけて、まるで運命のようにポジティブに捉えようとする人が決して少なくないが、今年のソフトバンクには「16」がラッキーナンバーだったようである。 話が脱線したが、昨季最大11.5ゲーム差を日ハムにひっくり返されたソフトバンクの雪辱は、なぜ成功したのか。 いくつかのデータを昨年と比較すると浮き彫りになってくる点がある。 26試合もあった逆転負けが12試合に減ったこと、サヨナラゲームの勝敗が3勝9敗から5勝2敗に改善されたこと。つまり、ブルペンが強固になり、勝ちパターンを確立できたのである。 先行逃げ切りゲームも、昨年の60勝23敗4分から、71勝8敗0分と大幅に増えている。 チーム防御率を見ても明らかで、先発の防御率は、昨年が3.13で今季が3.33と落ちているのだが、救援防御率となると、2.98から2.54と良くなっている。 ビールかけ取材を終えた評論家の池田親興さんが言う。 「8回の岩嵜、9回のサファテの2人が安定したことで、7回までにリードしておけばいいという考え方で戦えるようになった。加えてシーズン途中から左腕のモイネロが加わり、腕を下げる工夫をした左腕の嘉弥真、森がブルペンをより強固なものにして、さらにもう1イニング勝ちパターンが伸びた」 確かに岩嵜は68試合に投げて防御率1.84、セーブ記録を更新したサファテが63試合に投げて51セーブで防御率は1.14、嘉弥真、モイネロも防御率は1点台。2点を取られないのだ。サファテは、昨年は同点機に使われると7敗もしたが、今季の負けはわずか2敗である。工藤監督も「何連投しても文句を言わずに最初から最後までいい働きをしてくれた」とブルペン陣を絶賛したが、スアレスや五十嵐を故障で欠くなか、うまくやりくりして5人の勝利方程式を確立させたのだ。