うつ病は「脳の病気」 ~食欲ない、眠れない―兆候に注意~
うつ病は、働き盛りの人により多く発症する。原因は患者によりさまざまだが、「仕事や家事を怠けている」などという偏見が付きまとう。東邦大学医学部の端詰勝敬教授(心療内科)は「うつ病は脳内の神経伝達物質が関わる『脳の病気』とも言うことができる」と強調した上で、治療には薬物療法、精神療法とともに患者の休養が必要だと話す。
◇管理職に多い傾向
この病気の主な症状は、抑うつ気分だ。喜び、興味が失われる。本人が自覚するものとしては、眠れなかったり、だるかったりする症状が6割を超えるとされる。端詰教授は診察してきた患者の傾向について「男性では40~50代で、組織の中で責任が重くなる管理職に多い印象がある。昇進によって責任と仕事量が増す中、一人で抱え込み、発症するケースが多い」と指摘する。心理的なストレスでは、こんな例もある。突然、糖尿病と診断されると、ショックを受ける。通院、注射や服薬、食事療法、運動を課せられるといった負担がかかることで、発症につながる。 端詰教授が治療した例を挙げる。 学校関係者の患者は責任感が強かった。要職に就いてから、やる気がなくなり、受診した。診察の時には涙を流すこともあったという。 金融界で働いていた患者は定年後、経済的に不自由せず、週末に知人と競技マージャンを楽しむなど、生き生きとした生活を送っていた。ただ、結婚歴がなく、子どももいない。帰宅すると、時に寂しさでたまらなくなり、うつ病を発症した。
◇自覚症状、4つのサイン
兆候はあるのだろうか。見るからに元気がない。顔が何かどんよりしている。周囲も気付きやすいが、端詰教授は「この段階ではうつ病がかなり進行している」と言う。普段は温厚な人がいらいらし、ちょっとした事で言葉を荒らげて言い返すのも兆候の一つだ。 そういう状態に至る前のサインもあるという。自覚症状としては、よく眠ることができない、食欲がない、体がだるい、おもりを乗せられたみたいに頭が重い―といったことだ。家族や周囲の人が見て「食欲が落ち、痩せてきた。あまり眠れていないようだし、だるそうだ」と感じたときは、考えられる病気の一つとしてうつ病がある。「警告うつ」と言い、膵臓(すいぞう)がんや甲状腺機能低下、糖尿病などの病気が背景に潜んでいる可能性もある。