うつ病は「脳の病気」 ~食欲ない、眠れない―兆候に注意~
◇神経伝達物質の不調
うつ病は「心の病」なのだろうか。端詰教授は「セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンという神経伝達物質の調整がうまくいかなくなって起きる。脳の病気だと捉えた方がよい」と話す。 片頭痛に悩む人は、うつ病を発症しやすい傾向がある。共に、セロトニンという神経伝達物質が関係しているからだ。高齢者には「脳卒中後うつ」という症状も見られる。脳梗塞や脳出血で身体の一部にまひが残るのと同様に、神経障害が起きる。
◇マイナス思考を軽くする
治療では、抗うつ剤による薬物療法とともに、認知行動療法が重視されている。患者が自身の物事に対する考え方を理解することで、より現実的な捉え方を学び、行動を修正していく。 「これまで自分は何もしてこなかった。情けない」と言う患者に対し、別の現実的な考え方を提示する。「周りから『よく頑張ったね』と言われたこともあるでしょう。それほど悲観することもありませんよ」などと話し掛け、極端なマイナス思考から引き上げる。
◇休養は月単位で
治療は短期間では終わらない。端詰教授は「4カ月以上かかることが多い」とし、「休養が必要だ」と強調する。仕事で頑張り、「自分がいないと、仕事が回らないので、長くは休めない」という患者に対し、端詰教授は「休養期間が週単位で終わるとは思わないでください。月単位になります」と説明する。
◇「頑張れ」は禁句
うつ病の患者に対し、周囲が「頑張れ」と励ますのは逆効果になる。 「車に例えると、患者はオーバーヒートした状態だ。そこに『もっとアクセルを踏め』と言っていることと同じだ」 患者の会社の関係者や家族らは励ますのではなく、患者に寄り添い、優しく見守る姿勢が求められる。(鈴木豊)