マダニが媒介する新興感染症「SFTS」の脅威 ペットの犬、猫を通じた感染例も
SFTS感染リスクの増大
SFTSの感染患者はこれまでに石川県以西の23府県で届出が確認されており、傾向として西日本に偏っているとされます。厚生労働省・国立感染症研究所の報告によれば、九州から北海道の28自治体で2007~2015年にかけて捕獲されたニホンジカのSFTSV抗体保有率を調査した結果、西日本を中心に高い保有率が示されています。抗体保有率が高いということは、そこに生息するシカが過去にSFTSウィルスに感染した割合が高いことを意味します。 一方、九州から北海道の26自治体で2013~2015年にかけて国内に生息するマダニ野生集団内の重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)遺伝子保有状況をリアルタイムPCRで調査した結果、タカサゴキララマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ、オオトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ等、複数のマダニ種から、SFTSV遺伝子が検出され、患者が発生している自治体に限らず全国的にウイルスを保有するマダニが分布していることが示されています。 これらのことから、本来、SFTS患者は日本全国で発生する可能性があると考えられますが、実際には西日本に偏っています。その理由としては、シカなどの野生動物と人間の生活圏との間の距離が特に西日本エリアでは接近していることから、ウイルス保有マダニによる咬傷被害リスクが高いためであると推測されています。 しかし、ウイルスに感染する動物はシカだけではなく、様々な野生動物が感染および媒介をしていると考えられ、その後の調査で野生のイノシシからもSFTSウィルスの抗体が検出されており、シカ・イノシシの人間社会への急接近がすでに全国規模で発生して、深刻な環境問題となっている現状を考えれば、今後、このウィルス感染症が全国規模に拡大する可能性を警戒する必要があります。 そして、さらに感染リスクを高める要因として、外来生物の存在が指摘されています。