マダニが媒介する新興感染症「SFTS」の脅威 ペットの犬、猫を通じた感染例も
マダニはどうやって獲物を見つけるのか?
ほとんどのマダニ種にはメスとオスがいて有性生殖を行いますが、マダニの1種フタトゲチマダニには有性生殖系統と無性生殖系統が存在し、無性生殖系統では、メスが単独で自分のクローン卵を産みます。 マダニは目にあたる器官は持つものの、視力はほとんどなく、暗いか明るいかぐらいしかわからないようです。では、どうやって獲物を見つけるのか? マダニは前足の先端にハラー器官という、大気中の二酸化炭素を探知する器官を持っており、この器官によって、動物の吐息による二酸化炭素濃度の微妙な変化を感じ取り、宿主動物が近づいてくることを察知するのです。そして、草や木の先端に集まり、動物が接近したところでその体表に素早く取り付きます。 そして宿主動物の皮膚上を徘徊した後、鋏角(きょうかく)といわれるはさみ状の口器をつかって動物の皮膚にメスを入れ、口下片(こうかへん)といわれるくちばしをその傷口に差し込んで吸血を開始します。
マダニが媒介する感染症
マダニはSFTSだけでなく、もともと他にも怖い病原体を媒介する動物として知られています。日本国内で確認されているマダニ媒介性の感染症には以下のようなものがあります。 マダニが媒介する主な感染症(左から病名―病原体の種類―主な症状) 日本紅斑熱―リケッチア―発熱・発疹 Q熱―リケッチア―高熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、倦怠感 ライム病―ボレリア―遊走性紅斑、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、倦怠感、神経症状 回帰熱―ボレリア―高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感、咳嗽 ダニ媒介性脳炎―フラビウイルス―発熱、痙攣・眩暈・知覚症状 SFTS―フレボウイルス―発熱、消化器症状、神経症状 この他にも、海外では「クリミア・コンゴ出血熱(ウィルス)」「キャサヌル森林病(ウィルス)」などが報告されており、厚生労働省の感染症法で監視対象の指定を受けています。 これらの感染症は、重症化すると、最悪死に至る恐ろしい病気ばかりです。媒介するマダニは、フタトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニ、ヤマトマダニ、オウシマダニなど、全国に分布している種とされます。従って、マダニによる感染症の感染リスクは、本来、全国レベルで警戒する必要があります。 もっとも、これらマダニ類の生息はほとんどが山林や草原など自然が豊かなエリアに限られており、マダニに噛まれること自体、頻繁に起こることではなく、また、噛まれて病原体に感染する確率、さらに病気が発症する確率は極めて低いことから、これまでダニ媒介性の感染症が社会的に注目を集めることはほとんどありませんでした。 そんななか、突如としてSFTSという新興感染症が登場し、にわかにその危険性が増していることが社会的問題となりつつあります。