なぜ心の問題は「紙に書き出す」ことが推奨されるのか? 手帳を使うと生まれる意外なメリット
あらゆるもののデジタル化が進む現代社会。ビジネスにおけるタスク管理ややり取りの効率化など、その利便性は多くの方が実感しているはずです。一方で、自分の内面や人生に向き合う際に適しているのは、手書きをはじめとしたアナログツールかもしれません。 【図解】すぐ行動できる人の"ノートの書き方" ライフコーチであり、「pure life diary」という自分を整えるための手帳を開発・販売する本橋へいすけさんによると、人生をより豊かにするためにはデジタルとアナログの使い分けがおすすめだといいます。そのワケを詳しくお聞きしました。
デジタルとアナログ、それぞれのメリット
デジタルツールは非常に便利ですが、同時に気が散る要因も多く含んでいます。スマートフォンで何か作業をしているときに、SNSの通知やメッセージに気を取られることはよくあるかもしれません。スマホには、世界中の開発者たちが作ったアプリや情報が詰まっているので、それに引き寄せられるのは自然なことです。 デジタルツールのメリットを挙げるなら、効率が上がることです。例えばスケジュール管理においては、Googleカレンダーのようなツールが便利です。変更が容易で、リンクやファイルも一元管理できるため、業務効率も良くなりますよね。 一方で、紙のメリットは「単一デバイス」であることです。紙の手帳は「手帳であること」に特化しており、他の情報に左右されることなく、純粋に自分の考えに集中できる空間が作り出されます。そのため、頭の中にある考えやイメージを整理する作業にとても適しています。
手書きには偶然の出会いがある
私たちは、『pure life diary』という自分を整えるための手帳を毎年発売しています。 開発の経緯としては、コーチングなどを通して対人支援をしていると、1対1の支援では対応できる方の人数に限りがあり、もっと多くの人にアプローチしたいと感じたことがきっかけです。 そこで、コーチングや認知科学のメソッドをプロダクト化すれば、何万、何十万、あるいは何百万人もの人々の人生に影響を与えられるのではないかという考えが生まれました。そこから、私たちは手帳という形に落とし込むことを考えました。手帳であれば、習慣化しやすいし、個々の生活に深く根付くツールになるだろうという確信があったのです。 ではなぜ、アプリではなく手帳というアナログな形にしたのかというと、やはり「自分に向き合う」という点で、手書きの方が適していると感じたからです。その理由は大きく3つあります。 まず1つ目は、先ほどもお伝えした手帳は「単一デバイス」であるという点です。今の時代は、常に複数の情報に触れられる環境にあります。しかし手帳は、デジタルデバイスのように他のアプリや通知に邪魔されることなく、自分と向き合うための時間を作り出すことができます。デジタルに囲まれた今だからこそ、再びアナログに戻ることで、自分だけの静かな空間を持つことができるのです。 2つ目は、「偶然の出会い」です。手帳はスケジュール管理のためのものだけでなく、自分の気持ちや価値観、人生について書き留めることにも有効です。手帳は、ふと昔のページを見返すと、その時の自分が感じていたことに出会うことができます。「あの時はこんなことを考えていたんだな」と振り返ったり、今との違いに気づいたりすることができるのです。これが、手帳の中で起こる偶然の出会いです。 デジタル時代においては、検索という行動が中心です。明確な意図を持って情報を探し、必要な情報が表示される仕組みになっています。しかし、そこには偶然の出会いはあまり存在しません。この偶然の出会いや成長の実感は、手書きだからこそ生まれるものだと感じています。 3つ目に「感情の記録も残る」です。デジタルは楽しい時も悲しい時も同じフォントで記録が残ります。一方、手書きはその時の感情が字に表れます。 振り返った時に文字に書いてある内容と共にその時の自分の感情の状態もわかるのが、デジタルツールにはない手書きならではのメリットです。 デジタルの利便性ももちろんありますが、こうした理由から自分の内面と向き合うためには、やはり手書きの手帳が最適なのではないでしょうか。