脇道を出るときに忘れがちな「歩行者保護」|長山先生の「危険予知」よもやま話 第26回
「潜在的危険源」から危険を予測!
長山先生:おっしゃるとおり、車の存在を示す明確な手がかりがないので路地に注意する必要はありますが、今回の解答のように歩行者の様子を注意深く見ていれば、そこから危険が予測できるのです。 編集部:歩行者の様子と言っても、単に「右前方と正面に女性がいる」というだけではダメですね。 長山先生:そうです。まず右前方の女性については「自分と同じ方向に進んでいるので、そのまま真っ直ぐ歩くので問題ないだろう」と考えます。一方、向こうから来る女性については、「自分の正面になるので、十分注意して進まないと衝突しかねない」と考えます。 編集部:漫然と見ていただけでは、そこまで考えないかもしれません。 長山先生:ここまでは基本中の基本で、さらに「この女性はこちらの方向でなく、左側を見ている」という点を見落とさず、そこから「見ている左側に何かあるのかもしれない」を考える必要があります。 編集部:なるほど。見ているからには、何か理由があるわけですね。 長山先生:そうです。さらに私なら、路地があることから「たぶん、そちらから車が来ていて、それを先に行かすか、それとも自分が先に進んで車道を横断するか迷っているのだろう」と考えます。 編集部:自転車に乗っていてそこまで考える余裕はありますかね? 長山先生:そこまで考えることができなくても、左側を見て立ち止まっていることから、最低でも「何かが来ているのだろう」と予測してほしいです。 編集部:それができれば「車が来ていれば、減速しておこう」と、事故を回避できますね。 長山先生:そのとおりです。危険予知の多くは車両や自転車など危険な対象を目で確認できるケースが多いのですが、今回の解答である「女性の顔の向き」は、直接見えないものの、そこから危険を予測できる「潜在的危険源」と呼べるものです。事故につながる危険は直接見えるものばかりではないので、今回のような潜在的危険源から危険を予測するケースも、ぜひ危険予知の引き出しに入れておいてほしいものです。今回のように相手の行動を注意して見れば、次に何が起きるのか、次にその人がどんな行動を取るのか、読み取ることができます。それが安全を確保するうえで重要な課題になるので、ドイツではその能力を高めるため、小学校から“3Aの訓練”を行っています。