脇道を出るときに忘れがちな「歩行者保護」|長山先生の「危険予知」よもやま話 第26回
ドイツでは小学生から始める「3A訓練」
編集部:“3A”とは何のことでしょうか? 長山先生:3Aとは、ドイツ語で年齢(Alter)、注意(Aufmerksamkeit)、意図(Absicht)の頭文字から取ったもので、これら3点に着目して相手の行動を読むことを訓練しようとするものです。特に幼児や高齢歩行者・自転車の事故を防止するためには、この3A訓練は欠かすことのできない方法だと言えましょう。まず、第1の「年齢」とは、前方の歩行者を見たとき、単に人がいるというだけでなく、その人の年齢が何歳くらいなのか読み取ることです。 編集部:年齢ですか? 私は人の年齢を当てるのが苦手ですが、大丈夫ですかね? 長山先生:ここで言う年齢は具体的な数値というより、幼児なのか? 小学生なのか? または中学生なのか? という大雑把なものです。年齢によって行動特性が違ってくるので、その歩行者がどのような行動を取る可能性が高いかを予測し、対応できるようにするためです。 編集部:なるほど。たしかに飛び出し事故などは小学生に多いですけど、中学生になると一気に減りますからね。同じ子供でも年齢によって注意するポイントを変える必要があるのですね。 長山先生:そのとおりです。たとえば、歩行者用信号が点滅して赤に変わろうとしている横断歩道を渡りかけている歩行者がいたとします。その歩行者が若者か高齢者なのかで、やはり注意の仕方が変わるはずです。 編集部:そうですね。足をケガした若者や元気な高齢者もいますけど、基本、高齢者なら渡り切れなかったり、ふらつく危険性を考える必要がありますね。では、2番目の「注意」はどういう意味ですか? 長山先生:人の注意がどこを向いているか、こちらに気づいているかなどを読むことで、運転を行う場合に重要な課題になります。先ほど中学生は飛び出し事故が少ないという話が出ましたが、中学生でも友達とふざけていたり、どこか別の方向に意識が向いていれば、飛び出す危険性が大いにあります。どこに注意が向いているのかしっかり確認し、危険を予測して運転する必要があるのです。 編集部:たしかにそうですね。3番目のA、「意図」とは何でしょうか? 長山先生:「意図」というのは「何をしようとしているか」を読むことです。あの人は何をしようとしているのか、何をしたがっているのかなど、次に取ろうとする行動を予測する必要があります。 編集部:以前、バス停に止まったバスに乗ろうと、反対側の歩道から人が飛び出す問題が危険予知にありましたが、そのときに重要になるものですね。 長山先生:そうです。反対側の歩道にいる歩行者は、一見、自分とは関係がない安全な対象と思いがちですが、その人がバスを見ながら走っていれば、「バスに乗ろうと飛び出すかも?」と予測できるでしょう。このような読みは車を運転する際に相手の心を読むことで行っていますが、自転車に乗れるようになった子供にもとても重要で、その頃から訓練をしておく必要があります。