優勝したヤクルト高津監督がノムさんから学んだ言葉の力…「絶対大丈夫!」のスローガン背景に「ノムラID野球」あり
当時、ノムさんの“側近”マネージャーとして、そのミーティングの場にもいた松井優典氏は、セ・リーグを制した高津野球には「ノムラID野球」がかいま見えるという。 「野村さんがやってきたことがチームのベース、常識になっているように感じるね。ギャンブルスタートにしてもそうだし、打者から見ての配球の読み、投手から見ての攻めのパターンの原則をみんながわかった上で打席に立ち、マウンドに立っているのではないか。つまりこの状況ならこうくる、こう攻めるという原則やね。ノムラID野球という言葉は消えているのかもしれないが、間違いなく高津野球の根底にはあると思う」 ノムさんの“愛弟子“古田敦也氏が、今春の沖縄キャンプで臨時コーチを務め、捕手の中村に「おまえがやるんだ」との意識改革と「ノムラID野球」を伝授した。中村は、今季、走者三塁での打率が5割を超え、満塁での打率も.364と勝負強く、この日も3回に2点タイムリー二塁打を放つなど攻守でチームをまとめた。 青木から主将のバトンを渡された山田は、責任をもってプレーを続け、その背中を見て「チーム全員が副キャプテンの気持ちでやっていこうという気持ちで」と若き大砲の村上はベンチでもサードのポジションでも声を出し続けた。青木、川端、石川らのベテラン、山田、中村らの中堅、そして村上、塩見らの若手が見事に融合して、1プラス1が2ではなく、3にも4にもなり、阪神との最大7ゲーム差を吹き飛ばした。 高津監督が「絶対大丈夫!」と語って以降、9月15日の阪神戦から3つの引き分けを挟んで9連勝。その後に反動が出ることも懸念されていたが、連敗した後に7連勝。燕の勢いは止まらなかった。 松井氏によると、ノムさんはチームを優勝へと導く団結力について、こんな定義をミーティングで繰り返し説いたという。 「高校野球やアマチュアの野球は最初にチームが団結してから勝つ。だが、プロは違う。勝つことで団結するんや」 まさに今季のヤクルトが見せたのは、そのプロの団結の姿ではなかったか。 開幕前には、ほとんどの評論家がヤクルトを最下位、あるいはBクラスに予想した。絶対的な戦力不足。特に投手陣は先発の頭数さえ揃わず、廣岡を出してまで巨人の田口を電撃トレードで獲得、ソフトバンクから弾き出されたバンデンハークを獲得するなどフロントが必死に動くほどだった。開幕から阪神に悪夢の3連敗。だが、月が変わってオスナ、サンタナの新外国人コンビが加わり、打線が投手陣をカバーする形で息を吹き返すと“高津マジック“で投手陣も整備されて攻守のバランスが揃い始めた。白星が増えるごとにチームの団結力が強まった。