メジャー初制覇に獲得賞金2億円突破…なぜ女子ゴルファー稲見萌寧は強くなったのか…東京五輪銀メダル効果とパットの進化
平均パット数は19年が42位の1.831だったのが、今季はここまで1.765で2位。まさに“パット・イズ・マネー”だ。ちなみに、この「トラスパター」は、稲見効果で女子プロの間で大流行。菊地絵理香、堀琴音、若林舞衣子がこのパターで優勝を飾っている。 もちろん道具だけで勝てるはずもない。7月に22歳になったばかりのプロ4年目がここまで強くなった最大の理由は、豊富な練習量以上に「小さなころから負けず嫌いで、何でも自分が一番でないとイヤだった」という気の強さ、プライドの高さだろう。 5月を最後にしばらく優勝から遠ざかっていたが、東京五輪の銀メダルで、その自尊心も満たされ、さらなる強靭なメンタルを身にまとうことになった。 五輪から3試合目の「ニトリレディス」で優勝し、今回のメジャー初制覇。「不可能かもしれないけど、誰も勝てないくらいの実力をつけたい。完璧主義者なので全部が完璧になるように頑張りたい」。コメントにも揺るぎない自信がにじみ出ている。銀メダル効果だ。 最終日は、同組の大山志保と楽しそうに会話する場面がしばしば見られた。優勝を争う真剣勝負の場でのおしゃべりは、これまでも何度もあったシーン。これは何も稲見だけに限った話ではない。 「ずっと集中しても疲れる。自分では意識していないけど、楽しくやる方が好きなので、話をしたいと思って…」と説明、大山も、「オンとオフの切り替えがすごい」と稲見を褒めていた。緊張の舞台でもマイペースを貫く「稲見ワールド」も、また彼女の強さの一つだ。 最後に。 ツアーの堂々たる“顔と”なった稲見だが、若さゆえの“雑音”が聞こえてこないわけではない。あるゴルフ記者は、「本人に悪気はないのでしょうが、普段の会見もおざなりでやっていると感じてしまうことがある。新型コロナ禍で取材が制限され、選手との距離が遠のいた面も手伝っているのでしょう。ラウンド中のちょっと行き過ぎているように思えるおしゃべりも気になります」と苦言を呈した。 勢いにプラスして、“女王の品格”が揃ってくれば、稲見の強さは、もう手のつけられないものになるのかもしれない。