能登地震「携帯つながらない」 被災地の通信途絶 新技術で解消なるか #災害に備える
各社はさまざまな手法で通信復旧を目指したが…
通信の復旧については、通信キャリア各社も地震発生後すぐに着手している。だが、作業はスムーズに進んだわけではない。多くの道路で崩落や土砂崩れなどが発生し、工事車両がなかなか進めなかったうえ、断線箇所があまりに多かったためだ。
そこで別の方法が模索された。海からの通信を試みたのがNTTドコモとKDDIだ。1月6日、両社は、それぞれの基地局設備をNTTグループ会社の海底ケーブル敷設船に設置し、輪島市沖合に派遣した。この船上基地局から沿岸部の町野町地区(1月11日まで)や大沢町地区(1月13日から1月17日まで)に電波を届けた。一方、空からアプローチしたのがソフトバンクだ。無線中継装置を搭載したドローンを飛ばし、輪島市門前町の一部エリアで電波を届けた。このドローンは地上の電力装置とケーブルでつなぎ、給電しながら長時間(4日以上)連続で飛行できる。 だが、今回の通信復旧にもっとも貢献したのは「スターリンク」だろう。スターリンクは、米国のイーロン・マスク氏率いるスペースXが提供する、通信衛星を用いたインターネットサービスだ。 このスターリンクを活用したのがKDDIだ。同社は1月7日、スターリンクの専用アンテナ350台を無償提供し、役所、消防隊拠点、避難所など各所に設置。日常的なデータ通信のほか、オンライン授業、オンライン診療などにも役立てられた。断線した光ケーブルの代わりの回線として自社で使ったり、自衛隊、自治体、電力会社などに提供したりした分を合わせると約700台が活用された。ソフトバンクも珠洲市役所(1月7日)、能登町役場(1月8日)、輪島市役所(1月9日)などにスターリンクの機材を設置、100台以上を無償で提供した。
こうした衛星通信の当座の助けを借りながら、通信各社は復旧作業を進めた。そして、ソフトバンクは2月27日に能登半島地震の被災地全域で、NTTドコモ、KDDI、楽天モバイルは3月22日に、無人の島や立ち入り困難な一部地域を除くすべての通信エリアで応急復旧が完了したと発表した。