スタミナって結局、何? 疲れやすさを感じたら知っておきたいこと(専門家が監修)
スタミナ再定義② ラクに動けるチカラ
◎スタミナを左右するグローバルとローカルの要素 駅で階段に怯み、エスカレーターの列に並ぶ人はスタミナが心配。 「階段を上るのは、安静時の6倍前後の運動強度(6メッツ)。スタミナの基準値は性別・年代で異なり、6メッツの運動を3分間継続できて基準値が満たせるのは70歳代女性のみ。40歳代男性の場合、基準値は10メッツの運動あるいは生活活動を3分間継続できることです」(大阪体育大学の友金明香准教授) 運動には筋トレのように瞬発的なものと、ジョギングのように持久的なものがある。このうちスタミナが要求されるのは持久的なもの。運動界ではスタミナを「全身持久力」と呼び、グローバル面とローカル面という2つの要素から分析する。 グローバルな要素は、筋肉が求める酸素と栄養素を血液で円滑に供給する力。酸素を取り込む肺の働き、酸素を含む血液を全身に循環させる心臓と血管の作用で決まる。これをまとめて「心肺機能」という。 ローカルな要素は、運ばれた酸素と栄養素を、運動の主役である筋肉がいかに効率的に利用できるか。鍵を握るのはミトコンドリア。細胞1つに数百個から数千個含まれ、酸素を介して運動エネルギーを供給する。 ◎乳酸が溜まる強度でもラクに動けるように整える スマホで動画を何時間でも見続けられるからといって、スタミナがあるとは言えない。スタミナとはラクなことを延々と続ける力ではなく、階段上りのように少々しんどいことを粘り強く続ける能力を指す。 動いてしんどいと感じるとき、体内では「乳酸」という物質が増え始めている。乳酸は、筋肉などで糖質を代謝してエネルギーを生み出す際に生じる物質である。 筋肉は、速筋線維と遅筋線維というタイプの異なる線維をミックスしたもの。辛くて瞬発的な運動では速筋、ラクで持久的な運動では遅筋が使われやすい。このうち乳酸を盛んに生み出すのは、おもに速筋。速筋から出た乳酸は、隣接する遅筋でエネルギー源として利用される。 辛い運動を続けると速筋が作る乳酸が増えすぎて、遅筋での代謝が追いつかなくなる。こうして乳酸が一気に増えるポイントを「乳酸性作業閾値(LT)」と呼ぶ。乳酸自体は疲労物質ではないが、乳酸が溜まりすぎる状況下では疲労が生じやすい。 「LT前後までは疲れずに動き続けられる。LTを高め、しんどいと思わずに動ける強度が上がったら、スタミナが高まったと言えるのです」