青木宣親選手の引退で思い出す、好きなヤクルトの左打者3人【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第134回
それは美しくも、寂しい風景でした。 今シーズン限りでの現役引退を表明している青木宣親選手の引退試合となった、10月2日のヤクルト対広島。「1番・センター」で先発出場した青木選手は2回にレフト前ヒット、6回にはライトにツーベース。ヤクルトファンはもちろん、両軍の選手、そして広島のファンからも暖かい拍手が贈られました。最盛期を彷彿とさせるバッティングフォームは今もなお美しく、「本当にこの試合で引退する選手なの?」とため息をつかずにはいられませんでした。 【写真】山本キャスターの最新フォトギャラリー 日米通算2730安打はイチローさんに次ぐ2位。みんなから愛された偉大な左打者は、21年間にわたるプロ生活に幕を下ろしました。私は現地に行くことが叶わずテレビで観戦したのですが、最初から最後まで涙が止まりませんでした。 前々回では青木選手への思い出を綴りましたが、今回は青木選手へのリスペクトを込めて、私の好きなヤクルトの左打者をご紹介したいと思います。 その1:稲葉篤紀さん 稲葉さんといえば"イケメン"の代表格。姿勢とスタイルがいいことが印象に残っています。凛とした立ち姿でバットを構える姿はまるで侍のようでしたね。稲葉さんは2番や3番を打つことが多かった印象がありますが、足があってチャンスメイクができるだけでなく、パンチ力もあるので投手からしたら怖い打者だったでしょう。 私にとって稲葉さんは、トランプゲームの大富豪でいうところの「1」。手元にあったら気分が上がりますし、大事な勝負をかけたい場面、ここぞという時に切りたいカードです。もし自分が監督で、チームに稲葉選手がいたら、きっと打線も組みやすいはず。バットコントロールも巧みで、懐が深く、とにかく素晴らしい選手でした。その後の日ハムや日本代表監督としての活躍は、みなさんもご存じのとおりです。 その2:真中満さん 真中選手といえば、ヒットを打った後に、一塁に体が流れることが印象に残っています。1歩でも早く一塁に着くために、クルッと腰を回転させて走り出す様子は、左打者ならではといえます。 体は大きくはありませんでしたが、シュアなバッティングと長打力を兼ね備えていた真中さん。学生時代から、ヤクルトの大先輩である若松勉さんになぞらえて「若松2世」との呼び声も高かったとか。 ところで、私が子供の頃は今ほど左打者が多くなかったような記憶があるのですが、気のせいでしょうか。イチローさんが活躍を始めた頃から、「右投げ・左打ち」の選手が増えたような......。左打者は1塁に到達する距離が近く有利、ということも影響しているのかもしれませんが、昔は左打者というだけで特別な感慨を抱いたことを思い出します。