パットが一番入る確率は40センチオーバー!? 5位発進の横峯さくらがパット改革「また上で戦うために」
<住友生命Vitalityレディス 東海クラシック 初日◇13日◇新南愛知カントリークラブ美浜コース(愛知県)◇6560ヤード・パー72> “40cmオーバー”を体に染みこませる横峯さくら【写真】 ツアー通算23勝、38歳のベテラン・横峯さくらが7バーディ・1ボギー・1ダブルボギーの「68」で回り、首位と4打差の5位タイで滑り出した。「もう1度上で戦うために」と、プロ21年目にして初めて取り入れた“意識”が奏功しての好発進だ。 アウトから出た初日は3番パー5でティショットが右に曲がりOBに。そこは7メートルのパットを沈めダブルボギーと“耐えた”が、「(ショットは)修正が必要。パッティングに助けられた」と振り返る。 ティショットに不安を抱えながらも一番気をつけていたのは「パッティングの40センチオーバー」。常にカップを40センチオーバーするタッチで打つことを心掛けた。これまではラインに乗りながらもタッチが弱く、カップの手前で切れたり、ショートすることが多かった。「もったいないというのがずっとあった」とパットが決まらずスコアを伸ばせないもどかしさを感じていた。 カップインの確率を上げるためには「カップを過ぎないと始まらないというのが前提にあって、カップの手前なんて最低ですよ。届かないと」。ショートでは絶対に入らない。もともとその意識はあったが、これまでは「すごくおおざっぱな感じ」と話す。 そこでネット検索をした。パットが一番入る確率はどれぐらいオーバーさせた時なのか。“1メートルの距離を1メートルオーバーさせる”など、いくつもの理論があったが、“40センチオーバー”に合点がいった。「40センチなら返しも入るし、入る確率も上がるということで。正確には43センチ(オーバー)なんですけど…」。今週から、そこを明確にした。 今まで「一生懸命打って30センチオーバー」と、カップを越えることはあまり得意ではなかった横峯にとって、新しい感覚でもある。練習グリーンではカップの40センチ先にティペグを指してそこに止まるよう距離感をつかんでいる。以前より強めのタッチで打つことで、ラインも浅目に読むようにした。 この日は、6番パー3で8メートルの距離から1メートルオーバーし、さらに返しを外し3パットのボギーという場面もあった。「今までだったらダメだって(オーバーさせる意識が)戻っちゃうんですけど、40センチオーバーで打つ技術がないので、(3パットは)通る道と思って」ととにかく決めごとを貫いた。すると続く7番パー4では7メートルのパーパットを沈める。 6番を終えて2オーバーとしていたが、8番、9番で連続バーディ。後半は15番から4連続バーディで締めくくった。特に15番パー5は2.5メートルのバーディチャンスにつくと、「1カップ切れるかと思ったんですけど、(キャディの)夫が『40センチオーバーなら1ボール』と言ってくれて、1カップだと今までと同じなので1ボールで打ちました」と見事にカップインした。 今季はQTランキング40位でスタート。しかし3月から6月まで10試合連続で予選落ちを喫するなど成績を出せない試合が続いた。2015年から米国に主戦場を移し、22年から国内に本格復帰。22年は「北海道meijiカップ」で2位タイに入るなど存在感も示したが、昨季は「ゴルフ5レディス」の13位タイが最高。今季もここまでは「ニチレイレディス」の14位タイにとどまっている。 このままでは終われない。「また上で戦うため、優勝争いするために必要なこと」。14年の「大王製紙エリエールレディス」以来の通算24勝目に向けて、自身のゴルフをより高めるための要素の1つとしてパッティングを見直した。 意識改革初日の「26パット」を好スコアにつなげた。「40センチオーバーを意識して、これだけスコアがまとまるんだなと。それができたのはすごくうれしかった」と白い歯も見せる。パット改革を取り入れた09年の賞金女王が、新スタイルでリーダーボードを賑わせる。(文・小高拓)