「弱かったけど、ずっと一緒に戦ってきた」残留オファーを断り中日退団のビシエド…盟友・柳裕也が初めて明かす「早朝6時の空港見送り秘話」
10月7日、午前6時すぎ。人影もまばらな中部国際空港国際線ロビーに、中日の柳裕也の姿があった。旅行ではない。飛行機にも乗らない。仲間を見送るためだった。 【初出し】いかだに乗ってキューバから亡命「ぷっくりほっぺがあどけない」19歳のダヤン・ビシエドを見る「いまと全然違う36年前のイケイケ立浪監督」などこの記事の写真を一気に
最終戦の“サプライズ”
時計の針を12時間ほど巻き戻す。中日は今シーズンの最終戦を終えた。DeNAとの試合に勝つか引き分ければ5位だったが、負けたことにより3年連続の最下位が確定した。立浪和義監督の退任あいさつを終え、ファンへの感謝のセレモニーは全員による場内一周でフィナーレを迎える。 ファンの声援と拍手のボルテージが一気に上がったのは、一塁ベンチから出てきて選手の列に合流するダヤン・ビシエドの姿を見つけた時だった。当日の一軍メンバーではなかったから、参加する必要はない。サプライズ。同時にその意味をファンは瞬時に理解した。
「まだ打てるのに…」
直後に中日球団はビシエドの今シーズン限りでの退団を公表。報道各社も速報で伝えた。9年間在籍し、通算1012安打549打点は球団の歴代外国人では最高の記録だ。首位打者、最多安打を獲得した打撃だけでなく、ゴールデン・グラブ賞も受賞した名一塁手でもあった。来日9年目の今シーズンからはいわゆる「日本人扱い」となり、さらに存在価値は増すはずだった。しかし、出場15試合、9安打、1本塁打に終わり、契約は更新されなかった。 「まだ打てるのに辞めさせることはないだろう」 「功労者。球団はせめて他の選手のようにセレモニーくらいやってやれないのか」 どちらも多く聞かれたファンの意見だ。しかし、冷淡に思えてしまう退団公表に至るまでには、球団は来シーズンのオファーをし、「あなたが望むのなら、最終戦に出場しないか」とも打診したという。そのいずれも、ビシエドは断った。その理由が感情のもつれなら、サプライズで場内一周に加わり、立浪監督らと握手したりはしない。
名古屋を愛したビシエド
「俺はまだ現役でやりたい。だから来年はどこか違うチームでプレーしたいと考えている」 ビシエドはドラゴンズを愛している。名古屋の街にも溶け込んでいた。願わくば自分が「限界」を悟るシーズンまで、同じユニホームを着ていたかったことだろう。しかし、実力の世界では、往々にしてそうはならない。 オファーはあったとはいえ、チーム内でのビシエドの位置づけは急激に下がっていた。中田翔を獲得し、石川昂弥もいる。体制が代わっても、自分が第2、第3の一塁手として扱われることは容易に想像できるのだ。 オファーを飲めば、確実に来シーズンもプレーはできる。だが、ビシエドにとって「まだやれる」は、そこではない。どこからもオファーがないリスクは承知の上。まだ限界ではないことを証明する唯一の手段は退団であり、証明する場は他球団しかなかった。
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