中国はこうして日本の“半導体技術”を狙っている! ターゲットにされる理由は「危機感のなさ」
半導体を制する者が世界を制する――。世界的に先端半導体の開発・製造競争が激化する中、覇権主義国家の中国は日本の技術を巧妙に窃取し続けている。経済安全保障アナリストの平井宏治氏が、危機感と当事者意識に欠ける日本の学術界と政府に警鐘を鳴らす。【平井宏治氏/経済安全保障アナリスト】 【写真をみる】「習近平氏は独裁者」と書かれた横断幕が! “智能化戦争”推進する一方で反発も ***
いまや半導体は日常生活に欠かせない必需品だ。スマホはもとより、パソコン、テレビ、エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機……用途は極めて多岐にわたる。近年、世界的に需要が拡大している電気自動車には、1台当たりおよそ1500個の半導体が使用されているという。既存のエンジン車は1台で1000個程度だから、いかに半導体が技術革新に寄与しているかが分かるだろう。 その半導体は経済安全保障と密接につながる戦略物資でもある。日本政府が2022年5月に公布した経済安全保障推進法は、(1)重要物資の安定的な供給の確保、(2)基幹インフラ役務の安定的な提供の確保、(3)先端的な重要技術の開発支援、(4)特許出願の非公開、という4制度の創設をうたう。半導体はこの(1)と(3)に関わっている。
時代はAIを使った「智能化戦争」
その存在は軍事の世界でも極めて重要だ。戦車や航空機、艦船、潜水艦、精密誘導ミサイル、無人機といった最新鋭の装備品と軍事システムにも半導体が不可欠だからである。防衛省の調査・研究組織である防衛研究所は「東アジア戦略概観2001年」において、情報化が進む近代の戦争を大要、以下のように説明する。 〈人工衛星、目標攻撃レーダーシステムなどの各種センサーの性能が高まり、情報処理システムが高速化したので、ネットワークを通じて各部隊が情報をリアルタイムでやりとりすることが実現した。(中略)戦闘能力は、戦闘機や戦車などの個々の兵器の性能および高速化した情報システムと精密誘導兵器の能力により決まる。さらに、ロボット技術の発達により、無人航空機導入、戦場の偵察・監視や、あるいは、地雷除去のような、単純な作業ではあるが危険の伴う任務の無人化が進む。(中略)先端半導体を搭載したコンピュータが、人工衛星、目標攻撃レーダーシステムなどがもたらす膨大な情報を瞬時に処理できるかどうかで、戦争の勝敗が決まる〉 が、すでにこの情報化戦争は終焉(しゅうえん)を迎えつつある。今後の軍事作戦は、指揮官や司令部がAI(人工知能)のアシストを受けながら意思決定を行うことになる。AIが導き出した解答に基づき、AIに対応した智能化兵器が戦闘に従事する。このような、従来とはまったく異なる形態の戦争を「智能化戦争」と呼ぶ。 殺傷力、機動力、情報処理能力という3要素を最も高いレベルで備えるのがAIであり、AIを開発し、効果的に運用する軍隊こそが戦争の勝者となる。そして、目下、この智能化戦争の準備に国を挙げて力を注いでいるのが中国だ。