103万円?130万円?国会で議論されている「年収の壁」とは何か
最も重要なのは社会保険の壁=「130万円の壁」
今国会で議論されているのは、冒頭述べた税制上の壁だ。 国民民主党が提案しているのは基礎控除額を現在の所得税48万円、住民税43万円から75万円に引き上げることである。そうすると103+27=年収130万円まで所得税と住民税がかからない。 基礎控除は、所得から基礎控除を控除した後、税率をかけて税金を計算することから、税率の高い所得が高い人ほど恩恵を受けてしまう。そのため、一定金額以下の所得の人のみに基礎控除の引き上げを検討している。 ただ、103万円の壁を超えたからといって急激に税金が増加するわけではなく、そもそも年収103万円の人は住民税を支払っているのである。 もっとも急激に手取りが減ってしまうのは、社会保険料の壁である。 社会保険は扶養者である会社員の保険に加入すると、被扶養者である配偶者は健康保険料、年金保険料を支払わなくて済む。この被扶養者になれる基準が130万円である。 この130万円を超えると、社会保険料を自己負担しなければならない。それは、税制上の壁を超えたときの比でなく大きく手取りが減る。また、130万円を超えてなくても、勤め先が従業員数51人以上であると、年収106万円以上(月額8.8万円以上)だとその勤め先の社会保険に加入しなければならない。 勤め先の社会保険に加入することは悪いことばかりではない。社会保険料の半額は会社が負担してくれ、将来の受取年金額も増える。しかし、実際現在の家計の助けとなるために働いているのに、手取りが少なくなるのは納得いかないだろう。 なお、勤め先でパート・アルバイトでは社会保険に加入できない場合、130万円を超えると全額社会保険料が自己負担となってしまう。また、フリーランスや自営業の場合でも、社会保険は全額自己負担である。このような場合は、厚生年金ではないため、将来の受取年金額は増えず、扶養から外れたことでただ負担が増える。 今、将来の社会保険財政のために、加入要件を緩和することでパート・アルバイトの加入を増やしている。そのため、加入したくても加入できない人に対する加入要件緩和などの対応策や、130万円の壁をつくっている社会保険の扶養制度が本来は議論されるべきだ。 税制の壁については、まずはもっと国民の理解を深め、さらに税制を複雑化させ、国の財政健全化を遠のかせるのはどうだろうか。 文/大堀貴子
@DIME編集部