103万円?130万円?国会で議論されている「年収の壁」とは何か
実は…年収103万円でも税金はかかる
年収103万円というのは、所得税がかかるかどうかの年収の壁である。 給与収入には、基本的に所得税と住民税がかかるのだが、住民税は所得税と基礎控除が異なることから、実は年収103万円でも住民税がかかっている。 住民税には、均等割と所得割がある。均等割は年収に関わらず(※)、道府県民税年額1,500円、市町村民税年額3,000円の合計5,000円課税される。一方、所得割は課税所得に一律10%(県4%、市6%)課税される。 ※所得が一定金額以下、障がい、寡婦等で非課税になる規定はある。 所得税の基礎控除額は48万円だが、住民税は43万円である。したがって、年収103万円でも103万円-55万円(給与所得控除額)-43万円(基礎控除額)=5万円と課税所得は0にならず、均等割と所得割が課税されるのである。 年収103万円でも均等割5,000円、所得割5万円×10%=5,000円の合計1万円の住民税が課税される。住民税は、前年分を翌年6月以降に毎月源泉徴収され、6月ごろに勤め先から通知される住民税決定通知書で確認できる。 一定の所得金額までは住民税の所得割の税率10%の方が、所得税の税率5%より高いのに、住民税の年収の壁はあまり気にせず、103万円の壁ばかりを気にするのは奇妙だ。
配偶者控除と配偶者特別控除の違い
一方で、税制上の壁には、配偶者控除のことだと考えている人もいるだろう。 配偶者控除とは、扶養している配偶者の課税所得を計算するときに、控除することができ、課税所得を減らすことができる。例えば、パートしている妻を扶養している会社員の夫が、配偶者控除することで、夫の税金を減らすことができる。なお、この控除を受けるにはその夫の合計所得金額(給与所得のみなら給与所得控除後の金額)が1,000万円以下である必要がある。 配偶者控除には、配偶者控除と配偶者特別控除がある。配偶者控除は合計所得金額が48万円以下、つまりパート収入なら103万円-55万円(給与所得控除額)=48万円以下と年収103万円以下で受けられる。 配偶者控除額は合計所得金額が900万円以下で38万円、900万円超950万円以下で26万円、950万円超1,000万円以下なら13万円である。この控除は、所得が多いほど税率が上がる所得税の仕組から、年収が高い人ほど控除による減税効果が高い(合計所得金額900万円以下の場合)。 パート等をする妻の年収が103万円を超えたらどうなるか。直ちに扶養控除が受けられなくなるわけではなく、配偶者特別控除が受けられる。控除額は以下のように、年収が増えるごとにその控除額が減っていき、合計所得金額133万円以下、つまりパート収入なら約202万円になると受けられなくなる。 (参考)No.1195 配偶者特別控除|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm 配偶者特別控除は、パート収入が103万円を超えても一気になくなってしまうわけではない。配偶者特別控除額は、配偶者の合計所得金額48万円超95万円以下までは配偶者控除と控除額は変わらない。したがって、103万円を超えても年収150万円(150万円-55万円=95万円の合計所得金額)までは控除額は減らない。配偶者控除については103万円の壁はない。