ルーマニア大統領選、「TikTok工作」で泡沫候補が最多得票 再選挙へ
連鎖する極右勢力の躍進
SNSが支持の声を増幅し、大逆転勝利につながったのは、日本の兵庫県知事選挙も同じだ。しかし、兵庫県の斎藤元彦知事は県政を担ってきた実績があるのに対し、今回のルーマニア大統領選挙は政治手腕が全く未知数の候補が短期間で急浮上し、200万以上の票を積み上げた。斎藤知事は遊説を展開していたが、ジョルジェスク氏はほぼSNSだけで選挙戦を展開した。SNS上の不正を疑われてもおかしくない素地は整っていた。 しかし、昨今の欧州における極右勢力の躍進を見ていると、ジョルジェスク氏に票が集まったのは自然な流れだとも感じる。今回の大統領選挙では、物価の高騰も焦点となった。ルーマニアのインフレ率は22年、23年と平均10%を超え、現在も5%程度で推移する。 財政赤字も深刻で、現政権への不満が高まっていた。12月1日に行われたルーマニアの上下院総選挙では、両院とも与党のPSDが辛うじて首位を守ったものの、2位はいずれも極右のAURとなり、薄氷の勝利となった。 25年2月にはドイツで連邦議会(下院)の解散総選挙が行われ(関連記事:「ドイツ内紛で連立崩壊 ショルツ首相『前倒し総選挙』狙うもいばらの道」)、移民排斥などを掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の議席増が予想される。 フランスでも24年7月の国民議会(下院)選挙で極右政党が台頭(関連記事:「仏下院選、機能した“防疫線” 『敵の敵は味方』戦略で極右政権阻止」)。12月4日には左派連合と組んで内閣不信任案を可決、総辞職に追い込んだ。 欧州各地で極右が勢いを増す中で巻き起こった「SNS不正選挙事件」。米国でトランプ新政権が発足する前に、欧州では政治の混迷ばかりが目立っている。
酒井 大輔