ルーマニア大統領選、「TikTok工作」で泡沫候補が最多得票 再選挙へ
大統領選挙で「泡沫(ほうまつ)」と目されていた無所属候補が、まさかの最多得票を獲得。それだけでも異例だが、憲法裁判所が投票結果そのものを無効として、選挙のやり直しを命じた。東欧のルーマニアで実際に起きた出来事だ。 【関連画像】ルーマニア大統領選挙の開票結果(第1回投票) 11月24日に実施されたルーマニアの大統領選挙。トップに立ったのは、無所属で出馬したカリン・ジョルジェスク氏だった。極右かつ親ロシア派として知られ、得票率は22.94%。200万以上もの票を集めた。 初の女性大統領を目指す野党「ルーマニア救出同盟(USR)」党首のエレナ・ラスコニ氏(得票率19.18%)が2位に入り、現首相で中道左派の与党「社会民主党(PSD)」を率いるイオン=マルチェル・チョラク氏(同19.15%)は3位に沈んだ。 この結果は、ルーマニア内外に大きな衝撃を与えた。下馬評では、ジョルジェスク氏が勝つのはあり得ないと見られていたからだ。 ルーマニアのインスコップリサーチが11月7~12日に行った全国調査で、ジョルジェスク氏に投票したいと答えた有権者はわずか5.4%だった。候補者全体の6番手にとどまり、首位のチョラク首相(25.3%)の足元にも及ばなかった。 それが、2週間後の開票では形勢が大逆転していた。ロシアの介入による不正選挙を疑う声が強まり、憲法裁は11月28日に再集計を命じた。12月2日、憲法裁は投票結果を承認したものの、12月6日にこれを覆し、「選挙プロセスの公正性と合法性を確保するため」に今回の投票を無効とし、再選挙の日程を決めるよう政府に求めたのだ。 疑惑の舞台となったのは、中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」である。クラウス・ヨハニス大統領が国防最高評議会を緊急招集し、選挙の実態を調査した機密文書の機密解除を指示。12月4日に公開された文書には、TikTokを使ってフォロワーを急増させた手口が記されていた。文書はこんなくだりで始まる。 「ソーシャルメディアプラットフォームのアルゴリズムを悪用して、ジョルジェスク氏の人気を加速度的に高めたことが明らかになるデータが入手された」