ルーマニア大統領選、「TikTok工作」で泡沫候補が最多得票 再選挙へ
TikTokで選挙2週間前に起きた異変
ほぼ休眠状態だった797アカウントを含む約2万5000のアカウントが、選挙の2週間前から突如活発になり、組織化された宣伝キャンペーンを行い始めたのだという。 機密文書によると、これらのアカウントには、個別のIPアドレスが割り当てられていた。別々に活動していると見せかけて、実はロシア発の無料メッセージアプリ「テレグラム」上のグループから指示を受け、投稿された形跡が見られたという。 具体的には、特定のハッシュタグを用いるなどしてTikTokのフィルタリングをかいくぐり、投稿を拡散させた可能性がある。また、ジョルジェスク氏を宣伝したユーザーに対して10月24日からの1カ月間で、計38万1000ドル(約5800万円)の支払いを行ったアカウントが見つかったとし、これはルーマニアの選挙法に違反する行為だ、と問題視した。ルーマニア当局は12月7日、このアカウントの持ち主とされる36歳プログラマーの住居などを捜索した。 「今まで聞いたことのない状況だ」。ヨハニス大統領は、会見で国家の危機を強調した。そして、名指しを避けながらもきっぱりと断言した。 「ある候補者が、法律では選挙前の土曜日は禁止されているにもかかわらず、2日間にわたって大規模な選挙宣伝活動を行い、違法な利益を得ていた」 「彼は非常に洗練された選挙キャンペーンを展開したが、我々は、この候補者の選挙キャンペーンがルーマニアの利益とは関係のない国家から支援を受けているという情報を得た」 安全保障上の問題があることを理由に、文書の機密解除に踏み切ったと経緯を明かしたのだ。 本来であれば、12月8日にジョルジェスク氏とラスコニ氏による決選投票が行われるはずだったが、憲法裁の無効決定により、選挙は振り出しに戻った形だ。ヨハニス大統領は憲法の規定にのっとり、新大統領が就任するまで大統領の任期を継続すると表明し、「ルーマニアは安全で堅固な国であり続ける」と力を込めた。 一方のジョルジェスク氏は、こうした疑惑を一切否定し、「投票は民主主義の象徴だ。ルーマニアの国家は民主主義を奪い、足元から踏みつけた」と自身の動画で批判を強めている。 ジョルジェスク氏は、かつて極右政党「ルーマニア統一同盟(AUR)」に所属していたが、離党した。ルーマニア第一主義を唱え、ウクライナへの支援打ち切りや北大西洋条約機構(NATO)からの脱退などを主張してきた。