鴻海・関氏「日本は最重要」、日産買収計画の責任者が語る「EV生産シェア4割」驚愕シナリオ…M&Aで開発・製造強化
■ 関氏が語る鴻海の強みとは 鴻海は24年5月、世界最大の変速機メーカー、独ZFの子会社であるZFシャシーモジュールに50%出資。この狙いについて関氏は「先方から声がかかった。鴻海としてもシャシー(車台)については追加投資できる環境にないため、ZFの力を借りる。顧客がドイツのBMWやベンツといったプレミアムブランドであり、筋がいいと判断した」と説明する。 鴻海は19年にEV事業への進出を表明、台湾自動車大手の裕隆汽車と合弁企業を設立し、裕隆のブランドでEVを販売している。裕隆は台湾で日産とも販売面で提携している。 また、21年に鴻海はEVで乗用車タイプの「モデルC」を発表。先述したように鴻海のEV事業のスタイルはCDMSであり、自社でブランドは持たない。ブランドを持つ自動車メーカーにベースとなる「モデルC」を提供し、自動車メーカーがそれをカスタマイズした後に、製造は鴻海が一括で請け負うことを目指している。 このビジネスモデルだと、鴻海が直接的に最終消費者にEVを売ることはない。それでも、自動車メーカー同様の技術力や品質管理力が求められる。 関氏自身が鴻海に移って驚いているのが、意思決定と実行の速さだ。鴻海はクロスオーバー型EVの「モデルB」、ピックアップトラック型の「モデルV」など様々なタイプのEVを発表しており、今後、強化したい領域の一つに中小型のEVバスがある。今回のテックデイでも「モデルU」として初披露した。 「今年の1月にマイクロバスのEVをやろうと提言したら、約8カ月で形にしてきた。細かい点に課題はまだあるが、かなり完成度が高いものを生み出し、量産のためのコストをはじき出せる段階にまで来ている」と関氏は語る。 さらにこう説明した。
■ 圧倒的な低コスト化でEV事業を拡大 「我々は、徹底的に無駄を省き、開発費やリードタイムを圧縮し、低コスト化を実現させていくのが戦略です。伝統的な大規模自動車メーカーとの違いは、その点にあるといっても過言ではありません。後発で参入するので、こうした強みを『武器』にEV事業を拡大させていきたい」 関氏によると、日本企業4社が鴻海のEVを見て興味を持っているという。その際に、「鴻海がまさかクルマをつくれるとは思わなかった」と驚かれ、すでに2社とは契約に向けて動いているという。 関氏は「手ごたえを感じています。今のEVは価格が高い、利益率が低い、充電時間が長いという3つの弱点を抱えている。EVへの取り組みは、伝統的な大手自動車メーカーにとっては負担になりつつある」と指摘。そのうえで、「しかし、EVの比率はいずれ高まっていく。素早く完成度の高いEVを鴻海が開発し、顧客である自動車メーカーのブランドで提供すれば、市場は拡大していく」と見る。 鴻海は、ホームマーケットは台湾としたうえで、重要市場を日本・米国・インドと位置づける。関氏は「日本でのビジネス展開を最重要課題と考えている」と語った。23年時点で、日本は新車販売に占めるEV比率がまだ2%、インドも2%で米国は8%。こうした地域では伸びる余地はまだあると見ているのだろう。 加えて関氏は、EVの産業構造は今後変化すると見ており、それが鴻海にとって追い風になるとの見通しも立てている。 それは、自前主義から分業体制への変化だ。