鴻海・関氏「日本は最重要」、日産買収計画の責任者が語る「EV生産シェア4割」驚愕シナリオ…M&Aで開発・製造強化
ホンダ・日産を経営統合へと突き動かした台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の日産買収計画。その責任者の一人が、日産で副COO(最高執行責任者)まで務めた関潤氏だ。鴻海のEV事業の最高戦略責任者で、他社との提携戦略も担っている。日産買収に動いているとされる関氏の狙いとは。インタビューなどを通じて関氏に取材をしてきたジャーナリスト・井上久男氏が、鴻海サイドの「腹の中」を解説する。(JBpress) 【写真】日産買収計画の責任者、鴻海の関氏は古巣の日産を知り尽くしている (井上 久男:ジャーナリスト) 日産自動車の買収を狙っていることが明らかになった台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業。同社はEMS(Electric Manufacturing Service=電子機器製造サービス)で、米アップルのスマートフォン「iPhone」を生産してきたことで有名だ。 現在の経営トップである劉揚偉会長兼CEO(最高経営責任者)は、「ポスト・スマホ」(スマホ後)の世界でも成長を加速させる戦略を打ち出している。それが、AI(人工知能)、半導体、通信の3つのコア技術に重点投資し、EV(電気自動車)、ロボット、ヘルスケアの3つを次世代ビジネスと位置付ける経営方針だ。 最近では、世界中で開発競争が激化している生成AIに欠かせない米半導体大手エヌビディアのAIサーバーの生産も担っている。ちなみに、エヌビディアの株式時価総額は日本円で500兆円ほどもあり、トヨタ自動車の10倍を超える。
■ EV事業責任者の関氏がM&Aも担当 そうした中で、鴻海が力を入れている事業が、CDMS(Contract Design and Manufacturing Service=受託設計・製造サービス)だ。EMSとCDMSの違いは簡潔に言えば、EMSは顧客が開発したものを単純に組み立てることであるのに対し、CDMSは製造だけではなく上流の開発領域まで一貫して担当する点にある。 鴻海はEVについてはCDMSを中心に事業を進めていく方針だ。 そのEV事業の最高戦略責任者を務めるのが、関潤氏である。 関氏は日産でナンバー3の副COO(最高執行責任者)に就任後、2020年に日本電産(現ニデック)に移って社長を務めた。そして23年から現職にある。最近は、EV事業に加え、他社との提携戦略を担うミッションも加わった。 24年10月、筆者は台湾・台北で開催された鴻海の技術展示会である「テックデイ」に参加し、関氏に直接話を聞いた。インタビューなどを通じて見えてきたことは、鴻海が積極的なM&Aなどを通じて、EV事業のグローバル戦略を急ピッチで強化しようとしていることだった。 しかも、その強化策の中で、日産とホンダがいる「日本」は最重要ターゲット市場となっていた。