JRグループが運航した国際航路が運休のまま廃止へ 高速船「ビートル」の歴史とは
JR九州は、12月23日に開催した取締役会において、JR九州高速船の船舶事業から撤退することを決議したと発表しました。 【画像】JR九州から東京にやってきた、ド派手な塗装の元「ビートル」 JR九州高速船は、高速船「クイーンビートル」を用い、博多と韓国・釜山を結ぶ国際航路を運航していました。クイーンビートルは、2022年に国際航路での運航を開始(国内周遊行路では2021年に初就航)しましたが、船体にクラック(ひび)が入るトラブルや、浸水するトラブルが発生し、たびたび運休。そして、2024年には浸水警報装置の位置操作による浸水隠しという不祥事が発覚し、8月から長期運休となっていました。JR九州は、今回の船舶事業撤退に至った理由について、「(クイーンビートルの)ハード対策を施しても船体へのクラック発生のリスクを完全に払拭することができず、当社としては、運航再開のための確実な安全が担保できないと判断」したと説明しています。 JR九州グループの船舶事業は、当初はJR九州の直営で展開されていました。1990年5月、博多~平戸間で「ビートル」の運航を開始。国内航路では、後にハウステンボス航路を運航していたこともありました。当時使われていた船は、航空機メーカーのボーイングが開発した「ジェットフォイル」。現在でも、佐渡島や伊豆諸島、五島列島や屋久島・種子島に向かう離島航路などで使われている高速船です。 ビートルが国際航路の博多~釜山間に就航したのは、国内航路就航の翌年、1991年でした。同航路用のジェットフォイルは、廃止となった国内航路から移ってきた船も含め、一時期は4隻体制、末期でも3隻体制に。さらには韓国の会社が運航する高速船「コビー」との共同運航も実施されていました。また、2015年までは「日韓共同きっぷ」が発売されており、日本の新幹線とビートル、そして韓国の高速鉄道「KTX」を乗り継ぐ、日本の主要駅から韓国のソウル駅までのルートのきっぷが、まとめて発売されていました。 ジェットフォイルであるビートルの後継となったクイーンビートルは、オーストラリア製のもの。「トリマラン」という構造を採用した大型の船舶で、ジェットフォイルよりも定員増が図られていました。 新造船は、当初は2020年の就航が予定されていたのですが、同年以降の新型コロナウイルス感染拡大によって延期に。国際航路自体も運休となってしまいました。クイーンビートルの就航と国際航路の運航再開は2022年に実現しましたが、この2年間の就航延期と運休が、会社に大きなダメージを与えた格好に。鉄道事業者(のグループ)による国際航路の就航という挑戦的な取り組みは、残念ながら30年強で終止符が打たれてしまいました。
西中悠基