「市の未来がかかっている」…ホンダ狭山工場閉鎖、地元経済への影響度
ホンダが4輪車の完成車工場として操業してきた狭山工場(埼玉県狭山市)が、部品を含む生産を6月末に終了した。同社は完成車の生産ラインを同寄居町にある工場にすでに集約しており、残る部品生産の役目にも区切りを付け、狭山工場の撤去作業を進めている。地元の狭山市や隣接する同川越市は、地域経済社会への影響を注視している。 【グラフ】埼玉県狭山市の製品出荷動向 ホンダ狭山工場の建屋は、両市にまたがる川越狭山工業団地の一角にある。両市には金属製品や生産用機械器具などのメーカーが集積しており、跡地の利用方法を含めて工場閉鎖への関心は高い。 狭山市が2021年に地元の事業者に行った調査では、工場閉鎖で自社の生産などに影響が及ぶ可能性があるとした回答が、全回答208件のうち52件に上った。「売り上げの減少が見込まれる」や「他業種へのシフトや取引先のシフトを考えている」などだ。 これ以前から両市の製造業を取り巻く環境は、厳しさを増していた。経済産業省などの調べでは、両市とも製造業の事業所数や「製造品出荷額等」にこのところ漸減傾向がみられる。背景には労働力不足や後継者難などの構造的な課題がある。 こうした中で両市は企業誘致に加え、起業や新事業の創出を後押しする施策にも力を注いできた。狭山市は起業家育成施設「さやまインキュベーションセンター21」や経営支援拠点「狭山市ビジネスサポートセンター」を通じて起業家や中小企業の挑戦を支援。川越市も創業支援で川越商工会議所や日本政策金融公庫川越支店などと協定を結び、市内産業の成長を支える事業者の創出・育成に連携して取り組んでいる。 両市内では工場跡地についても工業振興につながる利用法を望む声が多い。ホンダは日産自動車や三菱自動車との経営統合も視野に入れて、拠点網のあり方を検討するとみられるが、地元関係者の間には跡地をどう活用するかに「市の未来がかかっている」との指摘もある。