「自分の身体を大切にしてほしい」ガン治療を経験した主婦が、すべての子育て中の人に贈る『鼻腔ガンになった話』
現在、日本人の2人に1人は一生のうちに何らかのガンになると言われている時代。情報として知っていても、「自分がガンになるはずがない」「まだまだ若いうちは大丈夫!」と思っている人がほとんどではないでしょうか。でも、ガンは年齢に関係なく誰にでも起こりうる可能性があるのです。 【漫画を読む】『鼻腔ガンになった話』を最初から読む それを身をもって経験したのが、『鼻腔ガンになった話』『続 鼻腔ガンになった話 未来への道』の著者・やよいかめさん。自らの闘病や家族との触れ合いなど、実体験をもとに描いたコミックエッセイがSNSで大きな話題を呼び、待望の書籍化。本作を通じて、やよいかめさんが伝えたい思いとは――? ■家族で「鼻腔ガン」に立ち向かう闘病コミックエッセイ 「ママ死んじゃうの?」 長引く鼻づまりの症状で病院を受診したやよいかめさんは、精密検査の結果、なんと突然のガン宣告を受けることに…。目の前が真っ暗になりながらも、頭に思い浮かぶのは夫や子どもたちのこと。これからどうする? 私がいなくなったら家族はどうなるの? 夫と2人の子どもとの幸せな暮らしを送っていた日常が、まさかガンによってあっけなく崩れ去ってしまうなんて…。 『鼻腔ガンになった話』『続 鼻腔ガンになった話 未来への道』は、彼女の実体験をもとに家族で共に闘病生活を乗り越えていく様子を描いた、闘病コミックエッセイです。 ■ガン治療は試練であり、自分の宝にもなる ――お父様と叔母様をガンで亡くされた経験を持つやよいかめさん。これまでもガンという病気を身近に感じていたと思いますが、ご自身の闘病生活を通して、ガンに対する認識・捉え方に変化はありましたか? やよいかめさん:少しずつガンが治る病気になってきているということが感じられています。このことは嬉しくてたまりません。最初に叔母がガンになった時、先進医療である陽子線治療もなかったし、治療ができるホスピスもありませんでした。医療関係者の方々が日々頑張ってくれているからこそ、治療は進化してきているんだと思います。だからこそ、早く病院に行かないのはもったいないと思うようになりました。 ――本作を描く中でご自身の体験を振り返ってみて、どんなことを感じましたか? やよいかめさん:いくつになっても、いろんな体験をすることは、自分にとって試練にもなりますが、宝にもなるということを実感しました。行動しないと出会えないということを改めて実感したので、作品をつくるだけでなく、実際に行動することも忘れないようにしていきたいなと思っています。 というわけで、今年の春から美術の非常勤講師として、中学校で働き出しました。週3で先生をして他の日に漫画を描いています。 ――やよいかめさんが、この作品を通して読者に伝えたいこと、感じてほしいことは何ですか? やよいかめさん:自分の身体を大事にしてほしいです。子どもの病院を優先して自分は後回し、どうせ大したことはない、病院は待ち時間が長い、お金もかかる、大きい病気がわかったら怖い…。これは私の周りで聞いた、病院に行かない理由です。私も以前は同じように思っていました。 でも実際に病気になると、自由に動けることがいかに幸せであったかを実感します。病院に行くのが遅くなると治療が難しくなってしまう病気も多いので、異常があったらちゃんと病院に行きましょう! 早期発見できれば、これまで治らなかった病気も治る確率が高まっているようです! 私はラッキーなことにステージ1で副鼻腔ガンが見つかったのですが、このガンがもし進行していたら、鼻から眼球、眼球から脳へと癌の腫瘍は増殖していた可能性が高かったようです。病気が進行したら怖いからこそ、早く病院に行って早期治療をしたほうが絶対にいいと思います。 ■人の役に立つ作品を作っていきたい ――現在も再発に気をつけながら過ごしていらっしゃると思いますが、治療を終えた今、ご家族にどんなメッセージを伝えたいですか? やよいかめさん:一緒にいてくれてありがとう。楽しい時間をこれからもできるだけいっぱい一緒に過ごしたいです。私が生きている間はできるだけサポートするので、たくさん冒険していっぱい成長してください。 ――やよいかめさんは、ご自身のガン闘病とガンと闘う家族の介護、両方を経験されていますね。現在ガンなどの病気で治療をしている方、またそのご家族に伝えたいことがありましたらお聞かせください。 やよいかめさん:ご家族の介護されているみなさん、毎日お疲れ様です。私に言われるまでもないかと思いますが、できる限りプロの力を借りて、負担を極力減らし、ゆっくり休んで、ご自分を癒やしてあげてください。自分に余裕がないと、人に優しくする気持ちを維持することは難しいと思います。 無理するなと言われても、無理しないとしょうがない場面も多いかもしれませんが、家族のために頑張っている人が苦しむだけではなく、日常を楽しめる時間を持てることを願っています。 ――もともとは陶芸作家であり、闘病後は漫画家として活躍するやよいかめさん。これから、どのような作品を描いていきたいですか? 今後の展望・目標を教えてください。 やよいかめさん:陶芸にしても、漫画にしても、人の役に立つ作品を作っていきたいと思っています。漫画を出版したことを大学時代に指導していただいた陶芸の恩師に報告したところ、「大学を卒業しても制作を続けて、人の役に立つ作品を作ることができているということは、作家として素晴らしい」と褒めてもらえました。陶芸の作品じゃないのに褒めてもらえたことに、私の方がびっくりしました。でもよくよく考えたら、陶芸は生活の中で使用されるものを多く作り出す分野で、私の「ガンになった経験を誰かの役に立てたい」という想いと重なる部分が大きかったんです。 だから私は漫画を描いていたとしても、自分の作品を生活の中で役立ててほしい陶芸作家なんだと気づきました。今は窯を持って陶芸作品を制作することは難しいので、これからもデジタルを勉強しつつ、誰かの役に立つ作品を作っていきたいです。 ――最後に、読者へのメッセージをお願いします。 やよいかめさん:私の漫画を読んでくださって、そして応援していただいて、ありがとうございます。皆さんの応援のおかげで、書籍になってより多くの人に読んでもらえるようになりました。これからも死ぬまで作品を作り続けますので、一緒に楽しんで下さい。これからもよろしくお願いします。 *** 本作を読むすべての人に、自分の身体を大切にしてほしいと語るやよいかめさん。家族のためにも、自分のためにも、まずは自分の身体としっかり向き合うべきだと感じます。 取材・文=松田支信