なぜ西武はBIGBOSSの3連勝を許さなかったのか
西武対日本ハムの5回戦が13日にベルーナドームで行われ、西武が4-3で逃げ切って借金を6勝9敗1分けの「3」に減らし、オリックスと同率の4位に浮上した。 完封負けした前夜から打順を大きく組み替えた西武は初回、4試合ぶりに3番に入った新外国人オグレディ(29)、今シーズン初めて4番を打つ呉念庭(28)の連続タイムリーで2点を先制。3回にもオグレディ、5番・外崎修汰(29)がタイムリーを放ち、前回対戦でBIGBOSS体制の初白星を献上している立野和明(24)をKOした。 守っては先発の松本航(25)が7回を3失点で踏ん張り、8回を三者三振に斬った平良海馬(22)、最終回のピンチをしのいだ増田達至(33)のリレーで締めた。負ければ最下位の日本ハムに0.5ゲーム差に肉迫され、故障者続出のチームがさらに負のスパイラルに陥りかねない瀬戸際で、攻守両面で力強く脈打った“強気”が西武を救った。
7回ピンチも松本を続投
1点差に詰め寄られ、さらに二死二塁で左打席に1番・淺間大基(25)を迎えた7回のピンチ。この試合で初めて豊田清投手コーチ(51)がマウンドへ向かった。 しかし、辻発彦監督(63)はベンチから動かない。ブルペンでは水上由伸(23)がスタンバイしていたが、それでも先発させた松本を続投させると心に決めていた。 「弱気の虫が出ていると感じるところもあったし、代えるのは簡単だったけど、あの回までは同点にされようが松本に投げさせようと。ローテーションを守っているピッチャーだし、このヤマというものを乗り越えてもらわないと、いつまでたってもダメなので」 豊田コーチがマウンドへ向かったのも、松本に「しっかり力を出し切って」と伝えるためだった。果たして、146kmのストレートでストライクを先行させた松本は、続く2球目で112kmのカーブを投じて淺間のタイミングを狂わす。セカンドへのファールフライに打ち取り、トータル93球、3失点で先発の役割をまっとうした。 3年目だった昨シーズンに初めて10勝をあげた2018年のドラフト1位右腕は、今シーズン3度目となる先発を前に、心中に誓いを立てていた。 「前の2試合は初回にやられていたので、今日は腕を強く振って投げようと。調子はよかったし、真っ直ぐも走っていたので、ゾーンにしっかり投げる意識でいました」 今シーズン初登板だった3月30日の日本ハム戦では、勝利投手になったものの、初回に1点を先制された。6日の楽天戦では四球を連発した末にタイムリーを浴びる独り相撲を演じ、初回にいきなり3失点を喫して敗戦投手になった。 ストライクを先行させようと意識するのではなく、最速150kmの威力あるストレートを軸に臆せずにストライクゾーンへ投げ込んでいく。マウンド上で自らに言い聞かせ続けた松本の“強気”が、BIGBOSS打線封じに奏功した。辻監督が言う。 「日本ハムさんがファーストストライクから積極的に打ってくるなかで、特に高目の真っ直ぐがよかった。球数も少なくなって、好投につながったと思います」 わずか7球で三者凡退に打ち取った初回は、淺間をどん詰まりのセカンドゴロに仕留めた初球のストレートで幕を開けた。BIGBOSS新庄剛志監督(50)のモットーでもある積極果敢なバッティングを松本の“強気”が凌駕する。その結果として4回までに許した走者は四球ひとつのみ、わずか47球でゼロを刻み続ける快投を生んだ。